【地球温暖化】温室効果ガスが穀物の収穫量に与える影響

RCP シナリオとは
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの研究グループの推計に基づき、温室効果ガスの排出が今後目標通りに抑制できたとしても、今後数十年(2100年まで)において、地球温暖化は世界の穀物の収穫量に悪影響を与える、ということがわかりました。
研究チームは、地球温暖化についての科学的な研究をするための政府間機構「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の発表する4つのシナリオに基づいて、地球温暖化が進む社会における主要な穀物の生産量の推移のシミュレーションを行いました。
採用された4つのシナリオは、代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)と呼ばれ、温室効果ガスの排出量の変動について、世界でどのように増減していくかを想定したものです。
パリ協定で合意された気温上昇の抑制幅(2度以下)を達成できる排出量(想定の中で最低値)を想定したRCP 2.6 から、想定される最大量の温室効果ガスの排出を見込んだRCP 8.5に分かれます。

例えば、石油などの化石燃料に由来する二酸化炭素の濃度に関していうと、RCPシナリオ毎に2100年までの推移をグラフにすると下記のようになります。

文部科学省 研究開発局環境エネルギー課より
温室効果ガスの抑制が最もうまくいく仮定(RCP 2.6)においても、地球温暖化は進行し、その結果主要な穀物の一部(トウモロコシとダイズ)の収穫量は悪影響を受けることが見込まれるということです。
一部の意見では、地球温暖化が進むにつれて農作物の成長には有利に働くのではないか?という話も出ていました。
しかし、今回の研究結果は、地球温暖化は穀物の収穫量には悪影響があることを明らかにしました。

(研究成果) 温暖化の進行で世界の穀物収量の伸びは鈍化するより
研究グループによると、世界の食料需要は2050年には16年の約1.6倍に達すると見込まれています。
そのため、主要穀物の収量を継続的に増加させるためには、肥料の管理や収穫量の多い品種の利用などの普及、高温の環境に強い品種や灌がい・排水設備の整備など、より積極的な気候変動適応技術の開発・普及を加速する必要があると述べています。
また別機関の研究結果の中には、地球温暖化は穀物の含有タンパク質量を減らすという報告もあります。
関連リンク:地球温暖化が進むとタンパク質が不足する?
近い未来においては、IoTの利用やドローンによる効率化などにより、同一面積からの穀物の収穫量が増えること可能性もあります。
しかし、長期的な視点が考えた場合、もっと根本的な変化も求められそうです。