対ロシア行動はESGなのか

変化が激しいサステナビリティ界隈で日々起きるちょっとした事案や、今後に影響を及ぼしそうなニュースを記録していきます。

今回は、ロシアのウクライナ侵攻を受けたスウェーデンの銀行によるESGルールの変更についてです。

スウェーデンの銀行がESGのルールを変更

先日、The Wall Street Journalでこんな記事で出てきて少し話題になりました。

ESG Rules Bend With War: SEB Says OK to Invest in Defense Stocks Again

(機械翻訳:戦争で曲がるESGルール:SEBは再び防衛関連株への投資OKを表明)

ここで言及している「戦争」はもちろんロシアのウクライナ侵攻のことです。

ロシアのウクライナ侵攻は毎日ニュースを騒がせ、歴史の教科書にも載ると言われる巨大事件ですね。

こちらの件については、多くの有識者の方々が様々な媒体で情報発信をしているので私から提供する情報は有りません。

ウクライナ、ロシアのどちらの国かは問わず、苦しまれている一般市民の方々や最前線で命を落としたりしている様々な方々に、一日も早く平和な日々が戻ることを願っております。

ニュースの内容

まずはニュースの内容を紹介します。

今回、ESG投資ルールの変更を発表したSEBは銀行を主軸としたスウェーデンの金融グループで、正式名称Skandinaviska Enskilda Banken AB(読めない…)です。
(なお、ESG投資のルール(ポリシー)は国際的な原則や自社のポートフォリオ等を参考にしながら、各金融機関がそれぞれ設定します)
SEBは2021年2月にESGに関するポリシーを設定していましたが、発行から一年で覆し、一部のファンドに兵器メーカーや防衛企業の株式購入を許可し始めると発表しました。
SEBは従来の方針を転換し、22年4月1日から、100以上あるファンドのうち6ファンドについて、収益の5%以上を防衛ビジネスから得ている企業への投資を認めることを持続可能性報告書(3月1日発行)の中で発表し、防衛関連企業への投資を許可するファンドをリストアップしました。

特に日本ではESG投資は急拡大した印象が強く、ESGとかサステナビリティに疑いの眼差しを向ける人は多いです。

このニュースを受けて、そら見たことか!欧州お得意の手のひら返しだ!ESGなんか信用できない!といった意図のリアクションが大きく、 な、なんとぉ…と言った感じで、自分も色々な意味で興味深く感じました。

欧州全体の話ではなく「スウェーデン」の話

ただ、今回のESGポリシーの変更はあくまでもスウェーデンの1銀行がやったことであり、欧州全体やESG全体の話ではありません。

もちろんスウェーデンはEUの一部ですし、SEBはESG投資の総本山であるPRIの署名機関でもあります。

しかし、上述したとおりESGポリシーは各金融機関が自社の状況も踏まえながら設定しています。

その際には自社が活動している国の状況も大きな判断材料に入っているのは言うまでもなく、スウェーデンはフィンランドの、フィンランドはロシアのお隣の国です。

今回のロシアのウクライナ侵攻はノルウェー国民も相当危機感を感じてるようで、NATO加盟に賛成の国民が増えたようです。

スウェーデン、NATO加盟支持が初めて過半数に 世論調査

自分たちのお金を預けている銀行がESGとかいうよくわからんこと言って自国防衛を担ってくれる企業をないがしろにしてるとしたら許せん、的な考えが広がったら銀行も叩かれそうだなぁといったことの妄想も可能です。

もしくは、世界的に武器や防衛系の銘柄の株価が高値を付けている状況を見て、こんな儲けの種を見逃すなんてとんでもない!的なことを考えたのかもしれません。

こういった状況下で、彼らにとっては不幸中の幸いなのかもしれませんが、ESGのポリシーをリリースしたのは21年2月。

まだ実装から1年しかたってないのでまだ内容を変更しても混乱は小さい、と踏んだのかもしれません。

会社説明の理由は「ロシアのウクライナ侵攻といった、ここ数カ月における深刻な安全保障情勢と地政学的緊張の高まりは、この問題を政策的に前面に押し出し、ファンド会社の一部の顧客の立場を変える結果となった。」と言っています。

顧客というのはファンドの出資者だと思われますが、明確なところはわかりません。

まあいずれにせよ、この新ルールが適用されるのはあくまでも、100以上あるファンドのうち6ファンドのみ。

ファンドの詳細までは見にいってませんが、額面としてそこまで巨大になる可能性は低いでしょう。

むしろ、世界的なESGの流れに水を差すというか、疑念をばらまいた点の方が圧倒的に影響が大きそうです。

ESGの総本山はどう考えてるのか

ロシアの脅威を常に感じている北欧諸国がウクライナ侵攻の件を真剣に捉えて動く、というのはまあある程度納得感もあります。

今回の事例はあくまでもノルウェーの1銀行のことなので、それがESG投資全体にどういう影響を与えるかはよくわかりません。

では、今回のロシアによるウクライナ侵攻を、ESGの総本山であるPRIはどう捉えているのでしょうか?

PRIはまだ明確な方向性なし

PRIのCEOのリリースが出ていたので読んでみましたが、

かいつまんで話すと「正直悩んでる。PRIは国連の組織だから国連に従うし、PRIの本部はロンドンにあるからイギリスの影響力も強いんだよね。」って感じのようです。

イギリスPRI本部が動いたら動くかもしれないし、国連が動いたら動くかもしれない。(ってそんなアホなことあるんか…)

そこで議論になっているのは、戦争がもたらす壊滅的な短期的な人的コストと、世界共通のサステナビリティ目標を無視することによる長期的な社会的コストのどっちがヤバいか、という点。

世界的な混乱と新たな冷戦は、長期的な環境、社会、経済のリスクを大幅に増大させるし、既存の社会的緊張とか不平等が悪化したら、気候変動対策の展望も脅かす。

どうしたらいいか結論出てません、ということのようです。

気になる方は、こちらのリンク先か、もしくは本文下に載せた機械翻訳の全文を読んでみてください。 いずれにせよ、イギリスや国連がESGという文脈でどんなメッセージを送るかに要注意となります。

今後に波及しそうな点と注目点

以上、ノルウェーの銀行がESGのルールを変更したことので、それがESG全体に波及するかに関して参考情報を見てみました。

感想としてはまず、ESGのあいまいさはずっと指摘されてきており、かつ会社単位での裁量もあるのだから、欧州とかESG投資とかの大きなカテゴリで拒否反応を示すのはジョークにとどめておくべきかなと笑

まあさておき、今回の動きにおいて、個人的に抑えておくべきと感じた点は、

  • 今回の事例はあくまでもノルウェーの一事例であるため過度な拡大解釈は慎重に
  • けど、ロシアの脅威を受けやすいところ等から順に、追従してESGのルールを変更してくる可能性有り
  • さらに、イギリスPRI本部、国連の動き次第で、短期的にESGのルールを捻じ曲げる可能性はゼロではない

今回の動きを受けて個人的に注目している点は、

  • ESGに拒否感を示している人は想像以上に多いので、少しの刺激でもハレーションしやすい
  • 拒否感の理由の中には欧州ルールの押し付け感やご都合主義な印象が少なくない(これは想定通り)ので、少しの刺激でもハレーションしやすい
  • イギリスはEUから外れててもPRIの本部がある以上、ESG投資への影響力をどう利用してくるか

一方少し真面目に考えると、下記のような流れで議論が変な方向にエスカレートしたら嫌だなぁと強く思います。

  • 脅威のためには武器製造も防衛力強化が必要【事前防衛】 ≒ 武器・防衛系もESG
  • (独裁政権や共産主義、社会主義など)一部の思想は支援すべきではない【忌避】 ≒ そういった国に投資するのは反ESG (ダイベストメント)
  • 一部の思想は(間接的な方法で)排除すべき悪【消極的敵対】 ≒ そういった国に経済・金融面攻撃するのはESG (アクティビズムみたいな感じ?)
  • 一部の思想は手段を問わずに排除すべき悪【積極的敵対・攻撃】 ≒ そういった国に直接攻撃を加える組織を支援することがESG

みたいなヤベー議論になる気配がしたら恐怖です。

例えば一個一個のステップに10年空いたとしても、行く末は地獄。 冗談で済むこと祈ります。

今回は以上です。

以下、PRIのリリースの訳文(機械翻訳)

ロシアによるウクライナ侵攻

先週の悲劇的な出来事を受け、PRIは世界中の人々とともに、ウクライナの人々に大きな同情を寄せています。5日足らずの間に50万人もの市民が避難し、紛争の両側で多数の負傷者や死者が出ており、この危機の人的コストは恐ろしいものです。

ウクライナにいる署名者のご家族やご友人が無事であることを願っています。私たちは、このような状況の影響を受けているPRIの同僚を全力でサポートしていますし、皆さんも自分の組織の同僚のために同じことをしているに違いありません。

これは地域的な攻撃ですが、根本的にはグローバルな人間の問題であり、グローバルな市場と国際関係に広く影響を及ぼすものです。ロシアによるウクライナへの侵攻は、G7の指導者たちによって、ルールに基づく国際秩序に対する深刻な脅威と見なされています。OECD理事会は、ロシアによるウクライナへの大規模な侵略は明らかに国際法違反であると非難している。アフリカ連合、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域の首脳は、ロシアに対し、国際法、人権法、人道法を尊重し、平和を回復するよう求めている。  

私たちは、この戦争がもたらす壊滅的かつ取り返しのつかない短期的な人的コストと、私たちが共有する持続可能性の目標から焦点を外すという長期的な社会的コストに直面しています。グローバルな市場とガバナンスは、国際協力、平和、安定を必要とします。世界的な混乱と新たな冷戦は、人権の保護と促進に影響を与え、民間人を強制的に移住させ、長期的な環境、社会、経済のリスクを大幅に増大させる。紛争と混乱の力学は人権を侵害し、既存の社会的緊張と不平等を悪化させ、気候変動対策の展望を脅かす。

現在、私たちは、このことが私たちや署名者にとって何を意味するのかを評価し、2つの重要な側面に焦点を当てています。 

金融活動や関係者に対する制裁措置がPRIに与える影響(PRIの署名企業やそれを管理する団体を含む可能性がある 

また、責任投資やESGの成果の観点からの影響(例えば、エネルギー転換、国連総会を通じたビジネスと人権、国際機関の機能など)。

PRI は国連の支援を受けている団体です。そのため、国連から伝達される今後の決定や立場を観察し、支持します。また、PRIはロンドンに本部があるため、英国政府のすべての決定がPRIの事業と署名者に与える影響を評価します。 気候変動とEU政策に関する私たちの進行中の活動は、現在の状況によって直接影響を受けます。私たちは、エネルギー移行、Fit for 55 パッケージ、そしてより広範な人権への影響について、さらに分析を進めていく予定です。

現在、私たちはウクライナの人々、そして昨今の悲劇的な出来事に影響を受けたすべての人々に思いを寄せています。ご不明な点やご質問がございましたら、お近くのPRIリレーションシップ・マネージャーにお問い合わせください。

よろしくお願いします。

PRI CEO David Atkin

引用終わり

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