ESMAのグリーンウォッシュ排除に向けた動きを雑に捉える

こないだ、サステナビリティ界隈の人がいつもお世話になっているサステナブルジャパンで「【EU】ESMA、サステナブルファイナンス・ロードマップ2022-2024発表。ウォッシュ防止を重視」というタイトルのニュースが出ました。

サステナビリティ界隈の人たちは、これで大丈夫なんだろうか、グリーンウォッシュにならないだろうか、という気持ちを感じ、いつも心にしこりを残しながら仕事を進めています。

そんな状況にも関わらず、ESG投資とかサステナブル~~というものは急激に増えており、それは数字にもはっきりと表れています。

そんな状況下に喝をいれるべくグリーンウォッシュの定義を決めちゃうかも、ということで、勉強しておいた方が良さそうな気がしたので、原文資料の読みに行ってザっと抑えておこうと思います。

ESMAってなんやねん

まあ普通であれば、ESMA欧州証券市場監督局って何者やねんというところからこのニュースを読む気が失せます。

サステナビリティ界隈は謎のアルファベットが毎日のように飛び交っているので、全部知ってるフリをするのも大変ですよね (挙動不審)

Wikiによると

「欧州連合の専門機関の一つ。欧州連合における金融規制機関として機能するべく、欧州証券規制当局委員会(CESR)を母体に2011年1月1日に設立される。本部はフランス共和国パリに所在する。同局は欧州金融監督制度(en:European System of Financial Supervisors)内で設立された3つある新しい欧州監督機関の一つである。欧州金融市場の機能を改善するために証券法規と規制の分野で活動する。そして、各国の金融規制当局間で投資家保護および協力を強化する。欧州証券市場監督局の背後にある考え方は「欧州連合全体の金融市場の監視役」を確立することにある。」

Wiki:欧州証券市場監督局

まあ要するに欧州における金融の監督機関で、金融業者向けに規制を定めたりする人たちです。国家の集合体である欧州ならではの単位ですね。

ESG投資ってそんなに増えてるのか

なお、ESG投資が増えているなどの点に首をかしげる人がいないように、参考情報をベタ張りしておきます。

世界のESG投資残高を集計しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は、隔年で発表している報告書(Global Sustainable Investment Review)の2020年版を公表した。今回で5度目となる調査は、GSIAが欧州、米国、カナダ、豪州/NZ、日本の5地域の機関投資家を対象としたものだ。それによれば、2020年の世界のESG投資総額は全体で35兆3千億ドルに達した。2018年の総額からは15%、2016年の総額からは55%の増加となる。なお、35兆3千億ドルという数字は、調査対象となった機関投資家の全運用資産98兆4千億ドルの35.9%にあたる(2018年は33.4%)。

日本総研:2020年版世界のESG投資残高統計が公表 量と質の変化に注目 より

グリーンウォッシュは否が応でも増える

サステナビリティ界隈の人であればご存じの通り、サステナブルとかESGというのは非常に不確定要素が多い世界です。

その状況下でこんなに投資が急拡大したらどういうことが起きるか?というと、意識しているか否かに限らず「不適格」なものが包含されるわけです。

それはESG~~、サステナブル~~が増えれば確実に増えていくものであり、紛らわしい・不適格な金融商品が紛れ込むことは投資家保護の観点からしたら非常に大きな懸念です。

そういった背景から監督団体であるESMAがグリーンウォッシュ排除に向けてロードマップを定めて本格的な活動を推進する、ということなので、原文を流し読みしておこうと思います。

3つの優先事項

ESMAはグリーンウォッシュ排除に向けて3つの優先事項を掲げました。
機械翻訳ですが、参考までに下記ベタ張り。

  • ① グリーンウォッシュへの取り組みと透明性の促進:

ESG投資への需要の高まりと急速に進化する市場の組み合わせが、グリーンウォッシュの余地を生み出しています。グリーンウォッシングは複雑で多面的な問題であり、様々な形態、様々な原因を持ち、持続可能な投資を目指す投資家に悪影響を与える可能性を秘めています。この問題を調査し、その基本的な特徴を定義し、複数のセクターにまたがる協調的な行動で対処し、EU全体で共通の解決策を見出すことが、投資家を保護するための鍵となるため。

  • ② NCAとESMAの能力構築:

持続可能な金融の重要性が高まる中、NCAとESMAは、この分野における新しい規制や新しい市場慣行の監督上の意味を理解し対処するために、従来の重点分野を超えて能力をさらに向上させる必要があります。ESMAは、複数年にわたる研修プログラムを通じて、またNCA間の監督上の経験の活発な共有を促進することにより、NCA及びESMAの持続可能な金融に関する能力の構築を支援する。これらの努力は、持続可能な金融の分野において効果的で一貫性のある監督を行うことにも貢献することでしょう。

  • ③ ESG市場とリスクの監視、評価、分析:

目的は、投資家保護と金融市場の安定に高い影響を与える可能性のある新たなトレンド、リスク、脆弱性を特定することです。ESMAは、そのデータ分析能力を活用して、ESMA及びNCAの監督業務を支援し、NCA間の収束的アプローチを促進する。ESMAは、他の公的機関とともに、投資ファンドの気候シナリオ分析、CCPストレステスト、気候関連リスク分析のための共通手法の確立といった特定の活動を行う。

要するに、

  • ESG投資が急速に多様化しすぎてて意識的か否かにかかわらず、グリーンウォッシュに該当しそうな事例が出てきている
  • 投資家保護の観点からなんかしないといけないけど規制が間に合ってないし当局側が監督出来る能力が無い
  • 欧州単位での監督も十分に出来てないし、国ごとの監督当局で結構ぶれが出てきそうな懸念がある

以上を受けて、欧州単位で統一のグリーンウォッシュの定義、見抜くためのトレーニングなどを準備していくことになった、ということです。

今後の影響

今回発表されたロードマップ予定には、補足資料として予定アクションと予定作成成果物が公表されています。

ちなみに、日本語でロードマップと言うとすぐに矢羽根が並んだポンチ絵が想像されますが、欧米だと”具体的な”アクションと成果物の整理の方が圧倒的に重要です (遠い目)。

資産運用業であればSFDRのアーティクル8、9が大事なところですが、今回の対象範囲はSFDRで不十分な点だけに限らず、資産運用以外の金融サービス業、一般事業会社の開示なども視野に入っているようです。

さらに、意図しているか否かを問わずグリーンウォッシュをバシバシ取り締まっていくぜ、と考えているとしたら結構大変そうな印象を受けます。

もちろんこれだけの範囲をバシバシ取り締まるという作業の下準備が一朝一夕で出来るわけもなく、サステナビリティ界隈でよく話題になる、幅広い領域で「グリーンか否か」を定義する「EUタクソノミー」とも整合した形を目指す、ということです。

結局EUタクソノミーが原典的な使われ方をするということですね。

その他、様々なアクションがタイムライン付きで並べられてますが、膨大の量になるので割愛。

今後に波及しそうな点と注目点

言わずもがな、
せっかく、ESGだ!というメッセージで金融商品を売りまくっていたのに水を差されることになるので、金融業界は震えあがることになります。

まずは情報の透明性に関してさらなるプレッシャーがかかることが予想されるので、あいまいなプロセスで進んだ金融商品とかは淘汰されちゃう可能性もありそうです。

(というか、意図しているかいないかにかかわらずグリーンウォッシュ認定をすることになるため、結構機械的に判断されるのかも?)

そして、金融業界が透明性を持った金融サービスを作るためには、投資先となる事業会社やプロジェクトに対しても今まで以上の透明性が求められます。

ということで、金融→事業会社は一蓮托生で情報開示を強化することになります。
少なくとも欧州は、これまでの情報開示強化の流れを止める気は全くありません。

ただ個人的には、ファーストステップとして委員を探すところから始める、と記載しているあたりズッコケました。

いや、これを推進できる人の選定すら出来てないんかーい!ということで、人手不足が深刻で混迷を極めるESG業界は変わらずです。

以上乱文を書きましたが、今回の動きにおいて個人的に抑えておくべきと感じた点は、

  • 悪意が無くてもグリーンウォッシュに該当した場合は何かしらの対処が必要となる可能性が高い
  • 監督する側も方法面・能力面両方でどうしたらいいか悩んでいる
  • EUタクソノミーが原典的な立ち位置にいることは変わらない
  • ESG~~、サステナブル~~という名前を付けた金融商品等は後からウォッシュだと言われるリスクを避けるためにしばらくは慎重になるかも

上とは別に、今回の動きを受けて個人的に注目している点は、

  • 透明性と比較可能性を担保した情報開示が要請されるが、具体的にそれはどういったものになるのか?
  • 規制や基準が厳しくなり続けてESG投資のコストが高くなっていきそうだが、経済合理性は保てるのか?
  • 人探しから始めているような状況で、本当にこのタイムラインで推進できるのか?

と言ったところです。

今回は以上です。

広告
LinkedIn にシェア
Pocket

tansighboy

シェアする

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。