感想:ESG情報の外部保証ガイドブック

「ESG情報の外部保証ガイドブック ――SDGsの実現に向けた情報開示」という本を読みました。
ESG投資の情報開示が進む中、情報の範囲や正確性をしっかりと把握しておきたいという需要も増えると思うので、こういった本が出てくるのも納得。
自分もサステナビリティ界隈の端っこにいる身として、サラッとは読んでおこうかなと思った次第。

監査・保証系の人向けの本を読みました

紹介文

読んだ本はこちら

ESG情報の外部保証ガイドブック ――SDGsの実現に向けた情報開示

監査法人系のサステナビリティコンサルとかで保証業務やる人向けのガイドブックです。

Amazonコピペした本の紹介文は下記の通り。

SDGsへのグローバルな関心が高まるなか、その実現に向けてESGに取り組む企業、それを高く評価するESG投資が急増中。各企業の取組みに関する開示情報は、本当に信用できるのか?

厳正かつ公正な評価を行う審査機関による、ESG情報審査に関するはじめての本格解説書。

ESG情報の審査の実際をできるだけ平易に解説しました。審査人としての豊富な経験を有するサステナビリティ情報審査協会の理事・監事たちが、その経験をもとにESG情報の審査の実際を紹介しています。ESG情報の審査を受けることをご検討中の企業の方々、そして審査側の実務に関わる方には必見の一冊です。

【目次】
第1章 ESG情報の審査に関する動向
1 ESG情報開示の動向
2 ESG情報に対する第三者審査の動向
第2章 ESG情報の審査の概要と流れ
1 審査の概要と受審企業にとってのメリット
2 契約締結前手続から審査計画策定
3 保証業務手続の実施
4 結論の形成と表明の方法
5 その他の審査業務関連実施事項
第3章 ESG情報審査の実務
1 ESG情報の審査
2 温室効果ガス排出量情報の審査
3 その他の審査等
4 保証業務を受けるにあたっての留意事項
第4章 ESG情報審査の基準・ガイダンス
1 国際保証業務基準ISAE
2 ISO14064シリーズと認定制度
3 EERの保証ガイダンス

感想

先に総括的な感想を書いてしまうと、
業界のベテランが膝を突き合わせて書いた本であっても、世間が一番注目するあたりに関しては実務的な部分のカバーは期待してたほどではない。
それだけこの業界がどのように情報を収集・精査・開示していくかで悩ましい状況にあるんだろうな、と感じました。
なお、ESG情報とありますが、内容はEとSだけです
さらに言ってしまうと、E面とS面も大分昔から活動が進んでいた内容が中心であり、最新トレンドを把握したようなものではありません。
実務家向けですが、この本の中身がためになりそうなのは実務家の中でもさらに特定の部分を扱ってる人だけかも、という印象。
例えば監査法人のサステナビリティ情報の保証チームの新人であったり、事業会社で人事や環境部門に新しく就任した人。
以下、なるほどなぁとためになったところをいくつか記しておきます。

ためになった点

どれくらいの会社がやっているのか、意味があるのかなどのデータ紹介

まずは冒頭のパートで紹介されている様々な集計結果のデータ。
例えば、日経225をESG情報の”第三者審査を受けている企業”と”受けていない企業”に分けて、それぞれGPIFの指数への組み込み割合を出しています。
一番差が激しいFTSE Blossom Japan Index では第三者審査を受けている企業であれば81.6%が指数銘柄になっている一方、第三者審査を受けていない会社で指数銘柄になっているのは30.1%にとどまっていました。

ニワトリが先か卵が先かという議論なので、第三者審査を受けたから指数銘柄になれるというわけではないですが、結構差が出るもんだなと感じました。
捉え方に注意をした方がいいものはあるものの、他にも面白そうな調査結果は色々載ってます。
(調査結果がKPMGとかトーマツばっかなのが気になるところだけど、EYとかPwCはあんまり独自調査やってないのかな…)

実務的なプロセスは想像しやすくなった

以下、実務的な面で面白かったところ。
まず、そもそも保証業務をするにあたっても軸となる基準選びから始めるという点。
これは言われてみればそうだな、と素直に感じたところ。
法令、業界 or ESG ガイドライン、ステークホルダーの関心を総合的に判断して基準を選ぶ、とありましたが、それだけで結構手間がかかりそう。というよりステークホルダーの関心をどうやって判断に入れるのかが気になる。

保証の強度

次に保証の強度は「保証の結論」を示す文言を見ればわかるという部分。
保証には大きく2つあり、「合理的保証」と「限定的保証」に別れる。
合理的保障は結構自信をもった言い方で、「積極的形式」で結論を表明するとのこと。
具体的な例文は「…のESG情報は、会社が採用した算定及び報告の基準に準拠して作成されていると認める。」といった感じ。
限定的保障は、まあ証明力は劣るけどそれなりにチェックできたよ、といったニュアンスで、「消極的形式」で結論を表明する。
具体的な例文は「…のESG情報は、会社が採用した算定及び報告の基準に準拠して作成されていないと信じさせる事項はすべての重要な点において認められなかった。」といった感じ。
何をゴニョゴニョ書いてんだ、意味わからんわ、と感じたことありますw

自信持てないんであれば、なぜ限定的保障になったのかの理由も併記してほしいですね。
これは監査人からしたら常識なのかもしれないがよく知らなかった点。意識してみてみよう。

それなりに歴史のある保証対象

最後に、保証業務の対象になっている具体的な数字の例がいくつも取り上げられていた点は非常に勉強になった。
Environment であれば「温室効果ガス」「廃棄物」「水」「大気汚染物質」「水質汚濁物質」
Social であれば「休業災害度数率・強度率」「疾病度数率」「障がい者雇用率」「従業員数」「女性管理職者比率」
いずれも、(法令等でも採用される)科学的な定義もしくは社内での定義を明確にして、社内データを各定義に照らし合わせて精査していくイメージ。
外に対してどれだけインパクトを出したのか、などを求められる昨今のESGのトレンドは、保証業務からしたらハイリスクなんだろうなというのが想像に難くない。

その他の点

その他印象として持った点は、

  • 従業員数は定義によって意外とブレる
  • 財務報告の範囲と統合報告の範囲で数字が変わることもあるらしいがそれはやめてほしい (とはいえ、自社が影響を及ぼすステークホルダーという捉え方をすると連結範囲に限らないのかもなぁというのは難しいところ)
  • 基本の定義は編集方針に書いて、個別で分ける場合はそのページの注釈に正確に書いてほしい

といったところです。

まとめ

色々と書きましたが、実務家の人であれば関係しそうなところを中心に読んでみるのは良いかもしれません。
投資家やその他ステークホルダーなど、情報の利用側の人たちはこの本の内容を全て把握する必要はないと思います。

内容的には、赤道原則にも触れているなどマニアックなところもカバー。
とはいえ、ESGと聞いて一番期待されるところについてはそもそもルールが整備されていないのでもちろん記載も抽象的。
内容の大半は昔からある環境・社会情報の保証業務の説明ですね。

ちなみに最後まで読んでから執筆者に知り合いが入ってたことに気づきましたw
監査法人のBIG4のベテランが並んでも、世界的に決まってないものは書けない、というのは理解して読むべきでしょう。

個人的な学びとして活かそうと思っている点は、

  • 限定的保証になっている時は、そうなっている背景を意識する
  • 保証業務の範囲に入る環境・社会項目は基本的に社内データ。社外に与えた影響などの数字が大々的に書かれていても保証されてないので少し慎重に受け取るべき
  • 財務報告と違う範囲で情報をまとめていることがあるので効率的にその点を抑える方法を意識する

今回は以上です。

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tansighboy

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