【効率2倍・コスト半分】風力発電業界の破壊的イノベーション Saphon
風力発電は、未来を支える再生可能エネルギーの発展のために、有用な技術であることが知られています。
風力発電といったら、陸上もしくは洋上で風車型の機械がクルクルと回り、その時の運動エネルギーを電気に変えるというのをイメージするでしょう。
しかし、こういった従来の風車型の風力発電には、いくつか問題点があるということも知られています。
例えば、風車が回る際の音のせいで近くの住民が騒音被害を被る(不眠症など)可能性、風車に鳥が巻き込まれ命を落とす可能性、生産したエネルギーを貯められない、そしてベッツの法則という物理法則に従うために変換・生産できるエネルギー効率に限界があるという点です。
(風車型の構造を使用した際の最大のエネルギー変換効率は、理論上は 16/27 = 59.3 %であり、これはベッツ係数もしくはベッツ限界 と呼ばれています 参考:【技術】風力発電の羽は大きいほど効率がいい?)
それらを全て解決出来る、という風力発電の構造が チュニジアのSaphonという会社によってデザインされています。
そちらの製品名は Saphonian。Saphon、Saphonian という名前のルーツはカルタゴ帝国時代の風の神の名前から来ているそうです。(Roots)
Saphon energy story
Saphonianの特徴は何と言っても風力発電なのに羽がないということ。
従来の風力発電は、正面から受ける風の力で羽を回転させることでエネルギーを生産します。
一方Saphonianは、帆船が進む原理を応用して、パラボラアンテナのようなデザインによって受け止める風から得られるエネルギーを最大限に利用するということです。

従来の風車型が、理論上の最大エネルギー変換効率が 59 %で、実情としては30~40%程度と仮定した場合、
Saphonianの理論上の最大エネルギー変換効率は、従来の2.3倍(つまりほぼ風力による全エネルギーを使用可能)と計算されているようです。
さらに、Saphonianは大きな羽やハブ(ブレードとローターの接続部分)、ギアボックス(回転数を調整する歯車の装置)が必要ありません。

そのため、製造コストも従来から45%も削減できるということです。
Saphonian によって生産されたエネルギーは、アキュムレータ(蓄圧機:hydraulic accumulator)によって、圧力という形のエネルギーに変換されます。
蓄積された圧力を好きなタイミングで電力に変換すれば良いため、エネルギーを蓄積することも可能。
羽がないから、音も静かで鳥を巻き込むこともなく、近隣住民や自然への影響も小さい。
製造コストは低い。
エネルギーの生産効率は高い。
生産されたエネルギーは蓄積可能。
なんだか話を聞いていると、本当にそんなに圧倒的に高性能なの?と驚きと疑問も持ってしまいそうです。

Saphon社は、「気候変動は日々拡大しており、それを解決出来るのは破壊的イノベーションだけだと信じている。イノベーションがサステナブルな変化を起こすためのエンジンである。」とのコメントを、会社のミッションとして掲げています。
Saphonは風力発電の世界に革命をもたらすのか、それによって再生可能エネルギー事情も根本から変えられるのか。
2018/9/17 追記
Newspicks さんにてPick いただきました。
エネルギーアナリストの方の意見としては、最終的に取り出せるエネルギーが、Saphonの掲げる計算通りになるとは考えづらく、詐欺の可能性が高いということです。
2013年あたりから被害者との議論もあるとのこと。
読者の皆様はご注意ください。
Newspicks:https://www.metabunk.org/is-the-saphonian-bladeless-wind-turbine-for-real-or-a-scam.t1672/
詐欺だとしても、Microsoftも騙してパートナーシップを組むというのはある意味スゴイかもしれません。
Sphon公式サイト:Microsoft partners with Tunisian start-up Saphon Energy
参考:tree hugger New Bladeless Wind Turbine Claimed to be Twice as Efficient as Conventional Designs
破壊的イノベーション理論:発展の軌跡 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)