ESG投資で株価が上がるのはどんな会社か? ‐ESG投資信託 未来の世界(ESG)を見てみよう

ESG投資の広がりに合わせて、ESGや脱炭素をテーマとする投資信託もチラホラみられるようになりました。
その中でも、”グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界(ESG))”という投信が「純資産総額ランキング」でも投信全体の2位に入り、まとまった金額を集めているようです。

投資をやっている方々であれば、「ESGは儲かるのか?」
会社の経営者や、会社員としてサステナビリティに関する業務をやっている方であれば、「どういった会社の株が買われているのか?」が気になることでしょう。

実際にESGをテーマに入れ、かつそれなりに支持を集めている投資信託を見て、どんな特徴があるのか?などを確認してみましょう。

未来の世界(ESG)は 規模2位の大きな投資信託

投資信託の正式名称は ”グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界(ESG))” ですが、あまりにも名前が長いので、ここから先は愛称として指定されている「未来の世界(ESG)」と呼ぶことにします。

言うまでもなく、投資信託は色々な投資家から一定のテーマ等に従ってお金を集めてファンドを組成し、お金をだしてくれた投資家に代わって投資を行うもの。

その投資テーマの中にESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を入れたものがESG投資信託と呼んでよいでしょう。

未来の世界(ESG)は、ファンド名の中にもESGが入っている通り、ESG投資信託の一つです。
運用会社はアセットマネジメントOne。みずほフィナンシャルグループの資産運用会社です。

純資産総額ランキング

その、未来の世界(ESG)は純資産総額ランキングで2021年において2位。
1位は”アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)”(以降は「A・B米国成長投信」と呼びます)というものです。

日経新聞:純資産総額(残高)の大きいファンドのランキング より

黄色で囲った部分が未来の世界(ESG)ですが、未来の世界(ESG)の純資産総額は、確認した時点で1兆1522億円。
一方、1位のA・B米国成長投信の純資産総額は1兆1845億円。
それぞれ1兆円超えのファンドということで、かなりの規模です。

ちょっと注意したい点

上のランキングを見た時に、少し気になる点は右側にある「購入時手数料%」と「実質信託報酬%」という部分。
未来の世界(ESG) のものは

  • 購入時手数料(税込):3.3 %
  • 実質信託報酬:1.848 %

この数字をそのまま計算すると、このファンドの購入手数料で累計 約380億円、信託報酬で年 約213億円が間に入る営業会社とか運用会社に入るわけですね。
ESGだからかはわかりませんが、投資信託って儲かるんだなって思います……高い!!

投資先の銘柄

では、これらのファンドは実際にどういった会社に、どういった割合で投資しているのかを見てみたいと思います。

未来の世界(ESG) の投資先銘柄(2021年8月)

2021年6月30日を基準にした、未来の世界(ESG)の投資先銘柄上位10社はこちら

月次運用レポートより

組み入れ比率の上位にマスターカード、Amazon、Uberと有名どころがかなり並びますが、eコマースソフトウェア大手のショピファイやインドの民間銀行HDFD銀行等、日本での知毎度が高くない会社も含まれます。
マスターカードはESGでも先進的と有名ですが、Amazon、Uber、ショピファイ、HDFC銀行はESGで満点とは言えず、突っ込みどころもある会社。
しかし、いずれの会社も収益力と成長力は抜群です。

競合の投信の投資プロセス(2021年8月)

一方、 純資産総額1位のA・B米国成長投信の投資先銘柄上位10社はこちら(2021年6月30日基準)。

月次運用レポートより

比率が一番多いアルファベットはGoogle の会社。それにマイクロソフト、Amazon、Facebook、VISAなどが続きます。ESG投信である未来の世界(ESG)とも銘柄がそこそこ被っています。
日本で知名度の低い組み入れ比率7位のゾエティスは動物向け医薬品の会社。
銘柄の上位は俗によく言う巨大IT企業群 GAFAM。収益力、成長力は疑問の余地もありません。

ESGの観点で見ると、GAFAMの中でもESG優等生のアルファベットやマイクロソフトが入ります。
過去に大規模な人権問題を起こしたものの、現在では人権管理で最先端を行っていると目されるナイキも含まれます。
なお、アドビは未来の世界(ESG)でも5位に入っています。

どこにESG要素があるのかイマイチわからない

はっきり言ってしまうと、ファンド名を隠してどっちがESG投信ですか?と聞かれたらわかりません。
投資銘柄を見ただけだとどこにESG要素が入っているのかが全く分からない。

Amazon、アドビ、VISAは両方の投信に含まれており、
ESGで先進的なマイクロソフトやアルファベットが A・B米国成長投信にだけ入っている一方、未来の世界(ESG)にはAmazonやUberなど、ESGで頻繁に突っ込み(労働問題など)が入る会社が上位に入っています。

何をもってESG投信としているのか、全くわかりません。
ということで、次は投資銘柄の選定プロセスを見てみます。

投資・投資銘柄の選定プロセス

未来の世界(ESG) の投資プロセス

まずは未来の世界(ESG)の投資プロセスを見てみます。

「愛称:未来の世界(ESG)」のファンド詳細 交付目論見書より

ざっくりと見ると、大まかな流れとしては、成長しそうなテーマ・銘柄を考えて、その中から割安そうなものを選定、ポートフォリオ全体のバランスを調整、という順序。

ESGの要素が出てくるのは、①投資アイデアの創出 での ESG評価(アラインメント)、②クオリティ分析 での ESG評価(クオリティ)、④ポートフォリオの構築・リスク管理 での ESG観点での銘柄除外、組み入れ比率調整 です。

ESG評価の説明は下記の通り。 

「愛称:未来の世界(ESG)」のファンド詳細 交付目論見書より

大きく、「除外」と「組み入れ比率の調整」の二段階でESG評価が利いてきます。
除外対象は超代表的な反ESG「業種」と、国による保有率が20%を超える企業 など、とあります。
はっきり言ってこの基準があっても無くても、たばこ、ギャンブル、化石燃料の生産等の企業は、成長性等の段階で除外されているのではないかと思われます。
組み入れ比率は、ESG評価のレーティングに従って変更するということですが、評価軸が多すぎてどうやって調整しているのかはよくわかりません。

このプロセスだと、ESGの要素を入れることが本当に他ファンドとの差別化要因になっているのか、よくわかりません。

競合の投信の投資プロセス

一方、 純資産総額1位のA・B米国成長投信の投資プロセスはこちら。

「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」 交付目論見書より

全体の流れは、成長可能性のありそうな候補会社を多めに出す(ユニバース)、成長性に基づいて上位300社くらいに選別、財務や非財務面を分析して100社くらいに選別、という流れ。
ここで注目したいのは、なんとこちらの投信にもESGの考慮が入っている点(画像内黄色ハイライト)。

なお、ESGの評価方法についての詳細な説明はありません。


ESGの考慮が入ってはいるが…?

両投信の投資プロセスを見たところ、どちらにもESG要素の考慮は入っていることがわかりました。
他の投信も見ないとフェアではありませんが、ESG要素の考慮は結構当たり前になっている可能性がありそうです。

ただ、未来の世界(ESG)の方はESGを押し出したファンドです。
ESGの評価が差別化要因になっていて、独自に切り口で投資先を選定していると考えるのが自然でしょう。
しかし、投資先の上位銘柄を見ると、必ずしも判断結果(投資銘柄)に大きな差があるとも思えません。
むしろ未来の世界(ESG)の方が首をかしげたくなるような会社も含まれている、という見方も可能です。

そしてもう一つ大事なのは、投資先の上位に入っている銘柄はいずれもがっつり儲けている、もしくは成長性がかなり期待されている銘柄ばかりということ。

上記に挙げたような点をまとめると、仮説として浮かび上がることは大きく三つ、

  • ESGの評価は投資先の選定(特にファンダメンタルズ分析)においてはやっていて当たり前のことになってきている
  • ESGを検討要素内で強くしても、ESG が原因で投資先が大幅に変わることは(少なくともまだ)ほとんどない
  • 結局、投資先になるのは儲かる会社・成長する会社

というところです。

結論

結局投資を引き付けるのは「儲かる会社」「成長する会社」

年金基金などがアセットマネジメント会社にお金を預けるときも、あくまでも「投資」であり、要するに「お金儲け」が目的です。
昨今のニュース報道などを見ると、あたかも「社会貢献」や「環境保護」が目的のように誤解されることもあるかもしれません。
しかし、実際の投資信託を見てみても、 「社会貢献」や「環境保護」 は検討要素の一つであって、目的ではないことがわかります。

儲からなければアセットマネジメントの会社はお金を預けてもらえず、お金を預けてもらえなければ利益が出ません。
利益が出なければもちろん会社を維持していいくことも出来ません。
そのため、アセットマネジメント会社がESGなどをうたった場合に選ぶ投資先は、「お金儲け」と「ESG」の両面で優等生の会社になるということです。
要するに、利益は出てるけどESG面が不安な会社はダメESGはバッチリだけど利益が出ない会社もダメということです。


そもそも、お金儲けをしないのであれば上場企業への投資である必要はなく、NPOやNGOへの寄付や、それこそ国に納税をちゃんとすれば公共事業などが改善されて社会貢献になるはずです。

将来的にどうなるかはもちろんわかりませんが、「社会貢献」や「環境保護」を考慮すると同時に「投資」であることを忘れてはいけない、ということでした。

それでは。
(そもそも、投資としてやるには購入手数料も信託報酬も高すぎ…)

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