謎に包まれたイースター島(ラパヌイ)の歴史が教えてくれる環境保護失敗の深刻さ【モアイが見つめた文明崩壊】

皆さんはイースター島と聞いて何をイメージしますか?
一番有名なのは巨大な石造、モアイだと思います。
その次は渋谷にあるモヤイ像だったり、人によっては宮崎のサンメッセ日南にあるモアイのレプリカかもしれません。

しかし、実はイースター島は、環境史、文明史の視点において非常に重要かつ有名な場所です。
なぜなら、イースター島は、人間の定住開始からほんの1000年程度で文明の発展から崩壊までを経ている特殊な土地だからです。

現代社会では、サステナビリティの名のもとに環境破壊などを止めるよう呼びかける声が大きくなっています。
持続可能な社会とは何か?失敗したら具体的にはどうなるのか?を考えるためにも、地球上最も凄惨な、サステナビリティ・環境保護の失敗例を紹介します。

絶海の孤島 イースター島

巨大な石造 モアイなどで有名なイースター島は、南米のチリの一部をなす島です。
サイズは日本の小豆島を一回り大きくした程度。

そんなイースター島は一言で表すならば絶海の孤島です。
一番近い島であるピトケアン島からも2250㎞離れており
南アメリカ大陸の一番近い都市、コンセプシオンからも3747㎞離れています。
日本列島は東西に3000㎞あると言われていますから、日本が丸ごとすっぽり入ってしまう距離です。

Google Map より イースター島の所在地はチリ沖から3700㎞

イースター島のたどった悲惨な歴史

ヨーロッパ人がイースター島に初めて到着した時、人口は3000人程度であったと推測されていますが、これには諸説あり現在はその何倍もの人がいたと言われています。
有名なモアイ像の建築に必要な人員、農業の痕跡、病気の蔓延などによる人口の動きから逆算すると、最盛期には1万5千人程度の人が住んでいたとの説も。

しかし1800年代の後半、イースター島の人口は一度100人ほどにまで減少し、全滅の危機に瀕しました。
この時、イースター島に存在していた文字がわかる人もいなくなり、多くの文化・歴史の記録も失われました。
これが、多くの本でイースター島の「文明崩壊」と呼ばれています。

イースター島の歴史

イースター島の大まかな歴史は、
①まずポリネシア系民族の到着から始まります。
②その後、農耕などがおこなわれて人口が増えていきました。
③人口が増えた結果、部族や社会が形成されるようになり、石の祭壇やモアイなどの文化的な建造物が出来ていきます。
④部族間が競うようにモアイ作りをしたり、人口がさらに増えることにより、森林がどんどんと減っていきます。
⑤森林がなくなった結果、イースター島の土はどんどんと海に流れ出したりしていき、農業が難しくなり、島民は大幅に減少します。
⑥そんな中、ヨーロッパ人がイースター島を訪れた結果、伝染病の蔓延や奴隷用の人狩りなどが発生し、さらに人口が減少します。
⑦結果として、最初にイースター島にたどり着いたポリネシア系原住民は100人近くまで人口が減少し、イースター島の文明は崩壊しました。

現在はチリ人などの移住者もおり、4000人程度が住んでいるということです。

手つかずの自然が残されていた島は、人間が定住するようになって社会を形成。
しかし、人口増加や人間同士の見栄の張り合いなどから森林が消滅。
森林がなくなったことで、食料が確保できなくなり、大量の餓死者が発生するなど、社会が急激に弱体化。
その結果、病気や奴隷狩りなどの外敵・侵略者に対抗することも出来ず、さらに社会が衰退。
結果的に文明自体が失われてしまった、という悲しい歴史です。

モアイは文明衰退の間も常に隣にいた (TIMEWISE TRAVELLER より)

人間を生かしてくれて「いた」島の自然

ヨーロッパ人がイースター島に初めて到着した時の記録では、木がほとんどなく、荒涼な風景が広がっていたということです。

ヨーロッパ人の到達よりも前の文献は残っていませんが、島に残っている植物の根っこや花粉などの分析の結果、
この島にはもともとヤシの木をはじめとして30種類程度の植物が茂っていたと予想されています。

では、そういった豊かな自然はなぜ無くなったのでしょうか?
(30種という数自体はそんなに豊富とは言い難いですが)

イースター島発見当時の絵画 (TIMEWISE TRAVELLER より)

その最大の原因は人口増加とモアイだった、と言われています。

イースター島は元々そんなに自然環境に恵まれている方ではありませんでした。
しかし、農業などを進めることによって人口が増えていきました。

食料を確保するためにはカヌー、網、釣り竿が必要でしたし、寒い時期には布やたき火も必須でした。
イースター島には大型の動物もいないため、全て木を材料にせざるを得ません。
そのため、人口が増えるにつれて森林の伐採は否応なく進んでいきます。

森林減少とモアイによる文明の崩壊

人口の増加と同時に起きていたのは部族間の抗争です。

ポリネシア人の定住以降、人口が増えていく中で石造りの祭壇などが作られるようになり、かの有名なモアイ像も大量につくられました。

しかし上述のとおり、人口増加・文明発展と同時に森林は失われていきました。
森林が失われると、雨風から土を守るってくれるものがなくなってしまい、結果的に土壌が海などに流出していきます。
そして、土がなくなっていくと農業は出来なくなります。

農業が出来る場所が減ってくると、食糧危機が起こり、人間同士の奪い合いが始まります。
イースター島に11あったと言われている部族の間で、減っていく農業用地等をめぐって争いが起きました。
モアイは、部族の財力や権力を見せびらかすためのものであったとも言われており、大きくて豪華なモアイが作れる部族はそれだけ強い権利を主張できたと考えられています。
その結果、争いが発展するに従い、モアイも大型化し、プカオという帽子を載せた豪華なタイプも出てきました。
(争いに勝利した部族は、モアイ像を引き倒したり目などの重要部分を破壊しており、一般的にイメージされる彫りの深い石像は目が破壊されたものです)

プカオを載せたタイプのモアイ (imagina Rapa Nui Isla de Pascau より)

言うまでもなく、モアイを作っても島の森林は増えませんし、農地も増えません
しかし、モアイの制作には人手が必要であり、木材やひもなどが必要です。
なので、社会的な争いによるモアイ制作の加速は、森林減少を悪化させこそすれ、根本的な解決にはつながりませんでした。

そして、飢餓と戦争により人口が急減していきますが、森林がなくなっている以上、農業用地の減少は止まりません。

食料が減り続ける中で、その内、争いの目的は「農地の奪い合い」から「狩り」に変わってしまいます。

つまり、人肉食が始まり、人を食べるための戦いが起こったのです。
現代社会からすると想像するのもおぞましいことですが、
当時使われた敵を挑発するための最上級の言葉として、「俺の歯の間にはお前の母親の肉が挟まっている」というフレーズが言い伝えられています。
また、当時のゴミ捨て場からは調理された人骨も見つかっています。
戦争用の武器が見つかっていない、と異論を唱える学者もいますが、人を食べる行為が行われた可能性はほぼ確実と言えます。

このように、自然への配慮が不十分なまま社会が肥大化を続けた結果、大量の死者と社会の崩壊を招いていしまったのでした。

ヨーロッパ人の到達と侵略

1700年代に入ると、ヨーロッパ人がイースター島に到達します。
彼らヨーロッパ人は、天然痘や結核などの致死率の高い伝染病をイースター島にもたらし、奴隷狩りによって島民の半分を奴隷化して島外に売り飛ばしました。

この結果、イースター島は決定的に衰退します。

この時期に作られたとみられている、モアイカヴァカヴァという人形は、肋骨が浮き出た飢餓状態の男性を模していると言われており、
当時のイースター島の厳しい状況を想像させます。

モアイカヴァカヴァの写真【カヴァカヴァは肋骨という意味】
(ブリティッシュミュージアム より) (典型的なモアイカヴァカヴァは左の2体)

1800年代の後半には、他国の領土に組み入れられ、移住者が大量に流入しました。
その結果、イースター島の原住民の社会はほぼ失われ、今では観光と考古学研究のために一部が残るのみです。

今や解読不可能となった、ロンゴロンゴと呼ばれる現地の言葉(Wkipediaより) 

イースター島が教えてくれる最悪のシナリオ

これらの一連の流れが、地球史上、最もシンプルに環境破壊が文明崩壊にまでつながった事例です。

イースター島の衰退には様々な要因が絡んでいますが、決定的なものは2つ
①自然環境が回復不可能レベルまで破壊されたこと、
そして
②それを止められない、促進してしまうような社会・政治的な背景があったこと、
です。

環境史、文明史の中で、イースター島の例は有名であり、頻繁に取り上げられます。

その理由は、イースター島という隔絶された環境が、人間の定住開始からほんの1000年程度で文明の発展から崩壊までを経ているためです。

我々の住む地球の外に、人間が移住できるような星はまだ見つかっていません。
広大なように思える地球ですが、宇宙全体で見たら1つの島国のような隔絶された環境であるとも考えられるのです。

そうすると、イースター島で起きたことが、地球という単位では起きるわけがないさ、と言えるような保証はどこにも無いのではないでしょうか。
特に現代社会では、環境開発という名のもとに、農耕や狩猟採集だけで生きていた社会と比べものにならないスピードで自然破壊が進んでいます。

もしもイースター島と同じようなことが地球単位で起きるとしたら…

①まず歴史上類を見ないほどの人口爆発が発生します。
②次に、地球単位で森林が喪失し、土壌が流出した結果、農業用地が不足します。
③農業用地が不足した結果、食糧危機に陥り、世界中が飢餓に陥ります。
④結果として戦争が始まり、文明が崩壊します

2050年には人口は97億人に到達すると言われており、人口爆発はすでに起きていることです。
森林喪失が深刻な状況で起きているとは言い切れませんが、世界の森林は年々減少しています。
現時点では食料が飽和しているとも言われ、飢餓や貧困は近年減少していますが、起きないという保証はありません。
飢餓や貧困を原因とした戦争は歴史上幾度となく発生していますが、運のよいことにまだ文明崩壊には至っていません。

2030、2050、2100年という未来において、地球がイースター島になってしまうのか、
世の政治家等にはぜひイースター島にならない道を選択してほしいものです。

(なお、一部の論文でモアイの移動のために森林破壊が加速した、という点に反証が出ていますが、
全体のストーリーを変えうるような論点ではないため割愛しています)

それでは。

参考文献:ジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」

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