【イギリス】フィッシュ&チップスの持続可能性

持続可能な漁業で獲られた水産物に対して認証を付与している世界的な団体、MSC(Marine Stewardship Council:拠点 ロンドン)によると、
過去に壊滅的な状況にまで追い詰められた北海のタラの資源量は近年回復しており、一部のグループがMSC認証を取得したということです。
MSC認証は、通称「海のエコラベル」と呼ばれ、この認証を受けた水産物は、持続可能な手法で漁獲されており、かつ販売から漁獲までのルートが完全に追跡可能になっている(トレーサビリティの基準を満たしている)という証明になります。

今回、認証を取得したのは、スコットランド漁業持続可能性認定グループ(SFSAG)の所属船。
スコットランドにおいては、産卵場・産卵海域の禁漁などの魚群を保護するシステムの導入、新しい漁網の試験的導入、漁船に設置されたCCTVカメラを用いた遠隔電子モニタリングシステムの開発などを通して、北海のマダラの漁獲量回復に努めてきました。
世界大戦の時代から、フィッシュ&チップスはイギリス全土において、広く親しまれ、国家の戦略的食物としても重用されていました。
その流れから、過去にはアイスランドを相手取ってタラ戦争と呼ばれる紛争を繰り広げたこともあるほどです。
しかし、過剰な漁獲の影響で、タラの漁獲量はがくんと落ちました。(参考:マダラ 1970年代 27万トン、2006年 4万4千トン)

マダラだけでも、イギリスでは1年間に約7万トンが消費されます。
一方で、英国の市場調査会社YouGov社がMSCのために行った調査によると、英国の成人の35%が、マダラが「持続可能かどうかわからない」「食べるべきかどうかわからない」と答えた、ということです。そして、調査対象者の28%は、「マダラ資源が持続可能ではないので、できるかぎり食べないようにするべきだ」と回答。逆に「マダラは豊富であり、サステナブルな選択肢だ」という意見を持つ人も、28%いました。
マダラの資源量に対して確証が持てない、もしくは懸念がある、と感じている人は合わせて63%になります。
こういった調査結果からも、持続可能な方法で漁獲されている、という保証には一定の付加価値があることが予測されます。
アイスランドやバレンツ海においては、既にMSC認証を受けた持続可能なマダラ漁業が営まれています。
北海のマダラも、持続可能な漁業が広がる可能性が見えました。
持続可能な形で漁業を行い、生態系との共存を続けていきたいものです。
具体的な資源回復までの道のりは下記リンク先に詳しく記載されています。
参考:北海マダラがMSC漁業認証取得
あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか (単行本)