炭素税、政府の税収の使い道は?【事例集】

炭素税、カーボンプライシングとは?

炭素税というのは、一言で言うならば、「温室効果ガス排出量に応じた課税」の制度であり、温室効果ガスの排出抑制などを促進するための仕組みのことを指します。

色々と存在する「環境税」の一種であり、「森林環境税」の類です。

ただ、一般的には課税の計算する時の単位は「炭素の含有量」であり、厳密には温室効果ガス排出量に応じたものにはならないとも言えます。

一方、カーボンプライシングというものは、炭素の排出量や排出権になどに対して金額を設定するもので、炭素税よりも幅広いことを観点に入れていると言えます。

日本における炭素税としては、CO2換算で1トン当たり289円が課せられる、温暖化対策税というものがあり、石油石炭税に上乗せする形で徴収されています(2020年1月現在)。

日本ではよく、炭素税が課されていないという人もいますが、環境税が乱立していてよくわからないからこそ起きてしまう誤解とも取れます。

ただ環境省も、「税制全体のグリーン化の推進(環境関連税制等)」として、2020年の税制改正要望事項の中でカーボンプライシングなどの概念の活用を財務省に呼びかけました。

環境省:令和2 年度 税 制改正 ( 租 税特 別 措置) 要 望 事項 ( 新設・ 拡 充 ・延 長 )

炭素税は、「作用目的税」と呼ばれるものであり、税収入を目的とするよりも、課税によって社会政策や経済政策などの非国庫的目的を達成するための租税と言われています。

ですが、税金である以上お金が徴収されて、それは国の会計の中で使用されます。

どうせ持ってかれるなら、その使い道はしっかりしてもらいたい!というのは国民として当然感じるところです。

ということで、海外の事例も含めて炭素税で徴収したお金はどういった形で使われているのかを紹介します。

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各国のカーボンプライシングの事例

カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州の事例

カナダのブリティッシュ・コロンビア州は、2008年の7月から化石燃料の購入・州内での最終消費に課税を開始しました。

要するに、卸業者などは払わず、燃やす目的で買う人(最終消費者)が税金を払うというものです。

課税額は2008年から2012年まで段階的に引き上げられ、2012年以降はCO2 1トン当たり、約 2,600 円の課税になっています。

使い道としては、所得税・法人税の減税、低所得者への手当に活用したということで、結果的に税収は増えていません。

カーボンプライシングの多くは、化石燃料の相対価格を引き上げる政策です。

そのため、光熱費や燃料費等への支出が支出全体に占める割合の高い低所得世帯ほど相対的な負担が重くなる傾向にあります。

例えば、年収400万円の家庭で光熱費1万円が2万円になると、大打撃ですが、

年収2000万円の家庭で、光熱費1万円が2万円になっても、そこまでの痛手にはなりません。

こういう、税金の世界で言うところの「逆進性」の課題が指摘されることがあり、国によってはその課税の仕方で、集めたお金の使い道も変わったりしています。

そのため、ブリティッシュコロンビア州では、 税金を取るところを変えて、税負担は変えないよ、というスタンスで社会への浸透を試みました。

結果的に2008年から2011年にかけて、温室効果ガスの排出量を10%程度削減に成功し、カーボンプライシングはおおむね予定通り機能したのでした。

スウェーデンの事例

スウェーデンは世界で最も早くカーボンプライシングを導入した国の一つであり、1991年に炭素税を導入。

現在でも、CO2 換算で1トン当たり119EUR(約14,500円)で世界最高税率です。

もちろん、そんな高い税金を易々と受け入れるわけもないので、 1991年の炭素税導入時には、法人税の税率を53%から30%に引下げています。

その後、時間をかけて少しづつ上昇させていますが、その都度、税率を上げたら低所得層の所得税を引き下げたり、と税収の分配の部分で工夫をこらしています。

例えば、エネルギー生産量に対して、効率が高い会社には分配を多くして、効率の悪い業者は分配を少なくする、そうすると企業は分配がもらいたいがために、削減だけじゃなくて効率化にも目を向けるようになります。

これは、スウェーデンの、CO2削減とGDP成長を両立させたい、という強い気持ちを反映させたシステムとも言えます。

ひとまとめに、増税になる!とか、企業の競争力が下がる!という批判が出るときもあるかと思いますが、それは税金のかけ方と税収の使い方でどうとでもなる、というのを表した事例です。

炭素税について先進的な取り組みを行っていたのは主に大規模でない国や、大国の一部の州などでした。

ただ、下のグラフのとおり、その他の国についても、フランスなどは今後炭素税の急上昇が見込まれており日本はどうする?というのも今後重要な論点になります。

徴収した税金の使い道パターン

前項目で紹介した通り、カーボンプライシングの制度を通じて徴収された税金の使い道にはいくつかの選択肢があります。

カーボンプライシングに関する考えを世界的にリードしている自主的なイニシアティブである、Carbon Pricing Leadership Coalitionが、その選択肢についてわかりやすくまとめてくれているのを紹介します。

使い道のパターン 概要

①他税の減税:家計所得や法人所得、財の消費、インフラや研究開発への投資などへの課税の減税

(長所)家計や企業の経済活動促進、他の税による歪みの軽減、行政コストの削減、市民の受容性向上等

(短所)制度設計次第で一部の企業や家庭に比較的大きな影響、カーボンプライシングの排出削減効果を損なう可能性

②家計への還元:家計に対する減税や税控除、現金給付、影響を受ける産業の労働者の就業支援等に活用。

(長所)エネルギーコストの増加がもたらす社会への影響を軽減、カーボンプライシングに対する市民の支持や当事者意識の向上

(短所)経済全体の生産性向上の機会を逸する可能性

③企業への支援 : 生産・投資活動、研究開発に対する税控除、省エネ投資やイノベーションへの支援に活用。

(長所)経済成長の促進、影響を受ける産業の懸念に対応

(短所)カーボンプライシングの排出削減効果を損なう可能性、特定の企業の優遇による他者の競争力低下、既得権益化のリスク

④公的債務・財政 赤字の削減: 債務の返済や財政赤字の解消に活用。

(長所)債権リスクの低減による経済成長の改善、将来の気候変動費用の低減による世代間公平性の改善

(短所)目に見える便益が少ない、環境面での直接の恩恵がない

 ⑤一般財源化: 政府活動の優先事項に合わせ、幅広い政府活動の資金源として活用。

(長所)現行では資金が不足している重大な事項に対して資金が調達できる可能性

(短所)環境面も含めて、明示的に効果が認識しにくい

⑥気候変動対策への投資:低炭素エネルギーの導入や省エネ支援、研究やイノベーション、インフラ整備等に活用。

(長所)環境関連投資の優先度向上、収入を気候変動関連に用いることは一貫性があり市民の支持を得やすい等

(短所)市場をゆがめる可能性、政府支出増加、税収配分の柔軟性・効率性低下、既得権益化のリスク等

(出典)環境省資料 Carbon Pricing Leadership Coalition(2016)「What Are the Options for Using Carbon Pricing Revenues?」より作成

日本が、今後どのタイプを選んでいくかはまだわかりませんが、もし税制に関しての議論が高まったら、その時は一度この選択肢を見返すといいと思います。

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まとめ

炭素税も税金。そしてなかなか侮れない金額です。

そのため、炭素税が低い国への企業の流出が起きるのではないか?とうのが一部の間では話題になっていました。

こういった炭素税のタックスヘイブン探しを「 炭素リーケージ」と呼んでいました。

しかしパリ協定もあり、今後世界中で炭素税はデファクトスタンダードになっていく可能性が高く、中国や欧米など主要な国はすでに取り組み済みです。

法人税などとも徴収方法が違うので、タックスヘイブンの仕組みのように、ペーパーカンパニーを作って回避というのもできません。

実際には、炭素税のいくつかの事例は、炭素税の大幅な引き上げと同時に、既存の法人税などを引き下げており、企業からの反発を回避したりしています。

その結果としての税収がプラスマイナスゼロになると、それは徴収が必要となる背景的な理由・方法だけを変えたことになります。

税制度のグリーン化、とはそういった意味であり、税制度がグリーン化したら自然とビジネスマンたち、一般市民は少しづつ自然に対する認識も強まっていきます。

日本は近年の消費税増税にともなうキャッシュレス減税など、税制が複雑です。

思想をがらっと変えて、税制度で国民の意識を変える、というのも一つの手なのかもしれません。

先進的な企業からは、すでにカーボンプライシングを将来起こるもの(強化されるもの)として、社内ですでに計算方法を作成し、インターナルカーボンプライシング(ICP)という形で公表しているところが多く出てきています。

「将来の世の中に備える」、「将来の思想に合わせた準備」という考え方に基づくことが、転ばぬ先の杖になることでしょう。

ではでは。

関連リンク:

参考:https://www.env.go.jp/earth/cp_report.pdf

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