最新の研究結果が明かすハリケーンと地球温暖化の関係性
最新の研究結果が明かすハリケーンと地球温暖化の関係性
ここ数年、北半球を中心に毎年のように非常に強力なハリケーン・台風を世界中を襲っています。
アメリカで大きな被害を出したハリケーン ハービーやフロレンス、
日本の関西地域を襲い、関西国際空港を水没させ多くの死傷者を出した台風21号、
フィリピン、中国を襲った台風22号も現地で多くの被害者を出しています。
一方で、南アフリカやオーストラリアなどの南半球の国々は水不足にあえいでおり、地球全体の気候がこれまでと違うことを感じさせるニュースが多く報道されています。
ニュース引用:オーストラリアの大干ばつ、8月に降雨も終結には程遠く
記事引用:世界で最初に水不足に陥る大都市:南アフリカ ケープタウン
そういった異常気象。特にハリケーンや台風と地球温暖化に関連性はあるのか?という研究は、日進月歩で発展しています。
最新の研究からわかってきた点をいくつか紹介いたします。
温暖化によってハリケーン・台風の移動速度は遅くなっている
ハリケーンや台風のスピードが遅くなった場合、一箇所により長く滞在することを意味します。
そうすると、より多くの雨を降らすことにつながり、洪水や土砂崩れなどによる被害拡大の可能性は高くなります。
Natureに掲載された論文 ”A global slowdown of tropical-cyclone translation speed” によると、1949年から2016年までの間に世界中における熱帯性低気圧(ハリケーン・台風)のスピードは10%遅くなっていることがわかったということです。
そのスピードの変化は地域ごとに差があり、北大西洋の地上における熱帯性低気圧は特に20%もスピード減していたとのことです。
また、西部北太平洋の熱帯性低気圧も同期間内で30%もスピード減しており、いずれもハリケーン・台風による被害の甚大化の原因の一つになっています。
A global slowdown of tropical-cyclone translation speed
ハリケーン・台風は南北の極地に寄ってきている
ハリケーン・台風という名前で呼ばれている熱帯性低気圧ですが、大元の原因は大気に蓄えられた湿度や温度、そして地球の自転です。
地球の自転により、コリオリの力が働き、北半球であれば左巻き、南半球であれば右巻きになる熱帯性低気圧ですが、
コリオリの力を原因にしている以上、赤道直下では渦を巻いた台風の形にはなりません。
熱帯性低気圧は海上での発生から、大雨を降らした後の消滅の間で勢力が強くなったり弱くなったりします。
Natureに掲載された論文 “The poleward migration of the location of tropical cyclone maximum intensity” によると、
熱帯性低気圧が最大勢力になるタイミングは、10年ごとに53~62kmほど極地に近づいているということです。
The poleward migration of the location of tropical cyclone maximum intensity
極地と呼ばれるのは北極と南極。
最大勢力のタイミングが極地に近づくということは、赤道直下の近くではこれから台風の勢力が弱くなり、赤道から遠くではこれから台風が勢力が増す可能性を意味します。
直近で台風の勢力が強くなる影響を受けるであろうエリアはインドの南部などが例として挙げられます。
日本の南部などももう少し長い目で見たらその影響は避けられないかもしれません。
一方で、赤道近くは台風が弱くなるから良いことか?というと一概にはそう言えない現状があります。
島国などで、淡水の供給源を雨に頼っているエリアなんかは、降水量の減少により干ばつなどの恐れがあるということです。
進む研究と深刻化する環境問題
Nature によると、2004年から2018年中旬までの間に、気候変動と異常気象の関係性に関わる科学論文が170以上発表されたとのことです。
それらのおかげもあり、自体の深刻さはどんどんと明らかになっています。
特に、海面の温度や大気の湿度は、気候変動の影響を受けていると目されていて、
シンプルに考えても、海面の温度上昇、水分の蒸発料増加、湿度の上昇、台風・ハリケーンの増加もしくは強力化と繋がりが見えてきます。
これまでの勢力、頻度を前提にしたインフラでは耐えきれないようなハリケーン・台風が増えた場合、どれだけの被害が起こるのかは想像するだけでも恐ろしいものです。
インフラ整備が行き届いていない国では、台風だけでも数千人規模の死者が出ることもあります。
台風が、インフラを作った時に想定した以上の勢力だった場合、似たような結果が起きても不思議ではありません。
これに対して、我々人間がどのように動くべきかは、一人一人が考えるべきでしょう。