再生可能な蓄電技術 太陽熱発電【オーストラリア】

オーストラリアで着工された太陽熱発電所
オーストラリアは、昨年 テスラ社との協力の下、世界最大のバッテリーの稼働を成功させました。
それに引き続き、今進めているのが、世界最大の太陽熱発電プラントの建設です。
太陽光発電と太陽熱発電を手がける会社 SolarReserve社は、6.5億ドル、150メガワット(150,000キロワット)という太陽熱発電所建設の承認をオーストラリアで得ました。
南オーストラリア州のエネルギー担当大臣Chris Pictonは、このプロジェクトを州の歓迎すべき発展と称しました。
また、彼は「南オーストラリアは、これから開始される予定の様々なプロジェクトも合わせ、今後数年間で再生可能エネルギーの発電・蓄電施設開発のための国際センターになっていきます。」とも述べており、
南オーストラリアは今後も再生可能エネルギーに関する革新的な開発事業が進められると期待されます。
「これはオーロラ太陽熱発電所(施設名)の開発において重要な一歩であり、クリーンな発電技術を南オーストラリアにもたらすでしょう。
クリーンエネルギー協議会のエグゼクティブゼネラルマネジャーのナタリーコラード(Natalie Collard)氏によると、「太陽熱発電がオーストラリアにおいてはまだ非常に若い技術であることを考えると、オーストラリア政府が電力に支払う価格は、著しく安い。」とのこと。
こういった発言からも、太陽熱発電が非常に高効率であり、将来的にまだまだ貼ってんの余地がある技術であることが示唆されます。
今回設置されたオーロラ発電所は、蓄電も可能にしつつ、約90,000世帯に電力を供給できるとのことです。
単一の中央塔に太陽エネルギーを集中させるために、複数のヘリオスタット(本質的にはミラーを回転させる)を使用することによって動作します。
このタワーは溶融塩技術を使用してこの熱を蓄え、後で必要に応じて蒸気でタービンを回して発電することが可能です。
同規模の火力発電所であれば、毎年20万トン相当のCO2を排出すると計算されており、CO2の削減にも貢献しています。
この太陽熱発電所は、南オーストラリア州のポートオーガスタから北へ30kmに設置される予定です。
太陽熱発電のSolarReserve社
この太陽熱発電を手がけるSolarReserve社は、太陽熱発電に付いては世界をリードする企業です。
太陽熱発電のポイントは、
- 溶かした塩 という安価で無毒な物質を使って蓄熱を可能にし、結果的に蓄電を行えるという点
- 安価に蓄電を行えるため、必要な時に必要な量だけ発電することができるという点
- まだ若い技術であり、改良の余地があるという点
- (理論上)同面積に太陽光発電施設を敷設した時の2倍の効率で発電が可能という点
などに集約されます。
SolarReserve社によると、蓄熱技術による蓄電のおかげで、ベースロードとしての化石燃料も不必要となるとのこと。
一般的に、最低限必要な発電量を安定的かつ安価に確保するために、ベースロード電源というものが必要です。
そして、ベースロード電源は、特に安定性という観点から、化石燃料や原子力発電などが最適だと言われています。

SolarReserve社HPを見ると、
彼らの強みは、溶融した塩の取り扱い技術などであり、
例えば塩の性質、装置の冶金、タンクの基礎設計とエンジニアリング、初期段階の溶融塩や試運転プロセスが彼らの行うサービスに含まれます。
溶融した塩は、大気と同圧の下で保持されるため暴発なども起こらず
566℃という高温で保管された塩は、優れた断熱構造により、1℃分程度の熱しか失わず、
使用される塩は交換などは必要とせず、30年以上に及ぶ施設の寿命の間ずっと使い続けられる
ということです。
また、熱を使用した発電する、という意味では従来の火力発電などの施設の技術が流用可能であり、
安定的で高品質な電気が、有害物質なしで得られるともアピールしています。
確かに、再生可能エネルギーを導入する際に、ベースロード電源のことは非常に重要な問題です。
大規模な社会を支える上では、電力がないなら使わなければいい、というわけにはいきません。
電力が少しの間途絶えたり、足りなくなるだけでも、
大型のデータサーバーがダウンして膨大なデータが喪失したり、
医療機器が機能停止して人命が危機に晒されたり、
工場の稼働がストップして経済活動が麻痺したりします。
電力を安定的に供給する、というのは途方もなく重要なことです。
では、太陽熱発電が今のままでも再生可能エネルギー業界の最適解なのか?というとそう簡単でもありません。
太陽熱発電を取り巻く問題点
米国カリフォルニア州南部のモハーヴェ砂漠で、2014年以降実際に稼働しているアイヴァンパ(Ivanpah)太陽熱発電所では、2016年にヘリオスタット(集光板)の向きの調整を誤ったことから火事が発生しています。
近隣を飛行するパイロットからは、反射光が眩しくて何も見えなくなるという発言もあり、
また、何千もの鳥が死んでいる(一部は焼死)のも確認されているとのことです。
こちらの発電所にはグーグルの親会社アルファベットなども投資を行っており、期待は高いです。
しかし、これまでのところ理論値ほどの発電効率は実現できておらず、非常に高コストになっているとのこと。
課題の解決に向けて
まだまだ問題点はありますが、再生可能エネルギーに蓄電技術が必要なことは事実です。
バッテリーを大量に生産しようにも、その材料として必須のコバルトなどの資源は供給量が限られており、簡単に調達することもできません。
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溶融塩を使うことで間接的に蓄電をする、という技術は、そういった資源上の制限も無いと言え、技術が確立すれば広めることは蓄電池よりも容易かもしれません。
鳥に被害が及んでいるのであれば、発電所の近くに鳥類が避けるような音などを発生させたり、鳥が近づかない工夫をすることが考えられます。
ヘリオスタット(集光板)の調節がズレて火事が起きてしまったのであれば、耐熱性を高くしたり、多少ずれていても最終的に目的の位置に熱が集まるように構造自体を工夫したりすることも可能でしょう。
いずれにせよ、成長が見込める技術であれば、
〜〜だからダメ。
ではなく、
〜〜が解決できれば革新起こせる!
という考え方が必要と感じられます。
将来的に世界で起きるであろうエネルギー不足、
進行し続ける地球温暖化、
解決の糸口は、たぐり続けてこそ解決につながります。
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