石油メジャーBPが総合エネルギーメジャーになる日

石油メジャーBPとメキシコ湾原油流出事故
言わずとしれた世界最大級の石油企業 ブリティッシュペトロリアム(以下、BP)。
彼らを含めた国際石油資本は、石油メジャーと呼ばれ、世界中の石油権益を一挙に握っています。
(石油メジャーとは、資本力と政治力で石油の探鉱(採掘)・生産・輸送・精製・販売までの全段階を垂直統合で行い、シェアの大部分を寡占する石油系巨大企業複合体の総称: wikipedia より)
石油の販売会社である以上、再生可能エネルギーの促進や地球温暖化抑制の流れは彼らにとって良くない流れに思いがちかもしれません。
しかし、彼らBPは石油依存型の自社のビジネスモデルを一番よく理解しており、化石燃料と地球温暖化に素早く気付いた企業の一つでした。
そして、彼らは数十年も前に「石油の先」というスローガンを掲げており、一時期はクリーンエネルギーへの投資を計画していました。
しかし2010年に発生したメキシコ湾原油流出事故により、BPはそれどころではなくなってしまいます。
メキシコ湾原油流出事故が発生した油田に対して、BPは65%のオペレータ権益を持っており、BPは責任を負って清掃費用、和解金などで総額 約2.3兆円を支払いました。
その支払に対処するため、様々な権益を売ったり、積み立てていた賠償基金を取り崩したりと、BPは何年にもわたって対応に追われていました。
BPの再生可能エネルギーに向けた戦略
そんなBPが、イギリスに拠点を置く太陽光発電の開発・管理会社Lightsource社に対して2億ドル(200億円以上)の投資を行い、株式の43%を取得したことを発表しました。
Lightsource社は、欧州最大の太陽光開発企業であり、主に大規模な太陽光発電プロジェクトの開発、取得、長期管理を得意とした会社です。

長い間、石油権益の取得から開発、管理を生業としてきていたBPとしては、対象が石油から太陽光に変わったことを意味します。
Lightsource社は、今回のBPによる投資を受けてBPと戦略的なパートナーシップを結び、世界中での事業展開を加速させる見通しとのこと。
BPグループの最高経営責任者 ボブ・ダドリー氏は「BPは20年以上もの間、低炭素エネルギーを促進させることを約束してきました。私たちはソーラーエナジーに戻ってきたことに興奮しています。ソーラー産業における当社の歴史は、製造パネルが中心でしたが、Lightsource BPは世界中の主要なソーラープロジェクトの開発と管理を通じて価値を高めます。私は、Lightsourceの専門知識と経験をBPの関係やリソースと組み合わせることで、この革新的なビジネスをより急速に成長させることができると確信しています。」と述べました。
BPの発表した統計によると、世界中で導入された太陽光発電のキャパシティは過去4年の間に3倍以上になっており、2016年だけでも30%以上成長したとのこと。
彼らの計算上は、2035年までに太陽光発電は世界の再生可能エネルギーの内の3分の1、世界のエネルギー消費の10%を占めるようになる予定です。
Lightsource社はここ7年で欧州最大の太陽光発電のディベロッパーにまで成長しました。
現在1.3GWの太陽光発電の委託を請け負っており、維持管理契約をした太陽光発電の総容量は2GW、これは50万戸の家庭に電力を供給出来る量に匹敵します。

今後も大規模な太陽光発電プロジェクトは増えていくと見込まれており、それに従ってそれらのプロジェクトの維持管理業務は重要になっていきます。
BPがLightsource社に期待していることの一つとして、BPが広く投資している他の再生可能エネルギー事業の補完があります。
BPは、アメリカ全土で風力発電事業を運営し、2.3GWもの電力を生産しています。
また、バイオ燃料事業では8億リットルのエタノールに匹敵するバイオ燃料をブラジルで生産し、低炭素な電力を発電しています。
これらの再生可能エネルギー事業の維持、管理に対して、Lightsource社のノウハウを応用していく計画です。
また、世界で最も有名な石油企業の一つであるBPのビジネスコネクション、規模を活かし、Lightsource社と共に再生可能エネルギー市場において世界のリーダーになることを期待しています。
石油企業から、総合エネルギー企業にかじ取りを始めているBP。
この流れが世界のエネルギー市場に与える影響は大きそうです。
Lightsource and BP join forces to drive growth in solar power development worldwide
結局、世界は「石油」で動いている (青春新書インテリジェンス)