シロアリの生態とバイオミミクリー

シロアリの生態とバイオミミクリー

 

日本では木造家屋に侵食したりと、いわゆる害虫に分類されているシロアリ。

しかし、長きに渡る研究の結果、シロアリはただの害虫ではなく、参考にすべき点のある非常に優秀な生物であるということがわかっています。

自然界の生き物の優れた性質を人間界で応用すること技術を、バイオミミクリーとか、ネイチャーテクノロジーと呼びます。

この記事では、シロアリの蓄積された工夫・技術を参考にしたバイオミミクリーを紹介します。

 

シロアリの生態

彼らはアリと呼ばれるものの、生物的な分類学上は普通のアリと異なります。

一般的に黒い色がイメージされる 「アリ」 は、膜翅目(今はハチ目と呼ばれているようです)アリ科に分類されますが、

一方シロアリと呼ばれるアリたちは、等翅目(今はシロアリ目やゴキブリ目と呼ばれているようです)シロアリ科に分類されます。

一般的に、分類が近いものは進化の系統が近いことを意味します。

そのため、普通のアリはハチに近い生き物であり、シロアリはゴキブリに近い生き物ということになります。

(さらに嫌われ者に拍車がかかるかもしれませんが…)

シロアリには、世界中で2230種類以上が存在し、特に熱帯の森林や草原に多く分布しています。

彼らは大まかに、女王アリ、王アリ、兵隊アリ、働きアリが存在し、一つのコミュニティがまるで一つの大きな生命体のように活動を行います。

 

シロアリの生活スタイル

 

熱帯の森林や草原に多く分布するというシロアリたちですが、極端に乾燥した地域や、サバンナなどにも多く存在します。

彼らはよく、蟻塚と呼ばれる巨大な建造物を作り出します。

蟻塚は最大で9m以上のものも見つかっており、4階建のマンションに匹敵するサイズです。

基本的に、その蟻塚の中とその周辺で何百万ものアリたちが生活をしており、蟻塚の中では生活を共にする別の生き物(同居人)もいたりします。

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シロアリの蟻塚

 

彼らは普通のアリと違い、他の虫の死骸なんかではなく、植物を主な餌とします。

枯れた木なんかも餌として使うことができ、いくらかの植物と水があればコロニーを作ることができます。

植物の構造は、多くがセルロースと呼ばれる多糖類で構成されており、彼らシロアリはそれを餌として利用することができるのです。

 

彼らの消化管の中には、無数の原生動物が共生しており、その原生動物の力も借り、セルロースをブドウ糖にまで分解することが可能です。

また、多くの種は空気中の窒素を別の化学物質に変換(窒素固定)するバクテリアを飼っており、アミノ酸、タンパク質も自分の体の中で産生できるということです。

 

しかし、彼らもすべて自分のお腹の中で分解を行なっているわけではありません。

 

シロアリは、農場に近いものを巣の中に作って共生を行う珍しい生き物です。

キノコシロアリと呼ばれる種は、自分たちでまず細かく砕いた植物片を、オオシロアリタケというキノコに与え、キノコがさらに細かく分解してくれた栄養素を取ることで生活をしています。

キノコシロアリに限らず、集めてきた植物を、シロアリにとって消化・吸収がしやすい段階まで分解する部分は、別の同居人に委託していることが少なくありません。

 

シロアリを参考にしたバイミミクリー

 

そんな生活スタイルを支えているのが、シロアリ特有の蟻塚です。

シロアリがなぜこんなにも巨大な蟻塚を作るのか?

それは長年疑問とされておりましたが、研究の結果わかった建造物としての優秀さから、蟻塚を真似した巨大ビルの建造なども行われています。

 

蟻塚の大きな利点は、

 ・温度と湿度の維持

 ・換気機能

 ・外敵からの防御

だと言われています。

 

ジンバブエの例

ジンバブエの首都 ハラレに1996年にオープンした9階建ての複合商業ビルのイーストゲートセンターは、シロアリの蟻塚の構造を参考にして、効率的な換気、冷房機能を実現しました。

 

一般的に、冷たい空気は密度が高く重たいです。

一方で温まった空気は密度が下がり、軽くなります。

そのため、イーストゲートセンターは、空気の上下動を容易にし、軽くて暑い空気を煙突のような構造から出て行きやすくしたとのこと。

 

この構造はパッシブクーリング「受動的冷房」と呼ばれ、冷却装置のコストを従来の10%にまで下げ、エネルギーの消費量も従来から35%もカットできたということです。

 

ドバイの例

 

アラブ首長国連邦の首都 ドバイにも、シロアリの蟻塚を参考にしたオフィスビルが建っています。

NYを拠点に活動する建築家、ジェシー・ライザーと梅本奈々子の二人によって建てられた23階建てのオフィス・ビル、O-14 ドバイ・タワーはその奇抜なデザインからも注目を集めています。

 

O-14 ドバイ・タワーはその外観に大小数々の穴を持っています。

表層の「シェル」と呼ばれる部分と、メインの部分には1メートル程度の隙間があり、いわゆる「煙突効果」を作り出しています。

そのため、空気の循環が効率的になり、温度調節のコストが低下する、というアイデアです。

 

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ドバイのO-14タワー

 

シロアリの不思議

 

では、建築家が参考にしている蟻塚の特性とは具体的にどういったものなのでしょうか?

一つは、日中と夜間で大幅に変化する熱帯の気候に適応するための保温・保湿機能。

熱帯においては夜は0度、日中は50度なんていう日も存在し、保温対策を行わなければ、安定的な環境で済むことは非常に難しいのです。

 

そしてもう一つは、蟻塚内で発生する二酸化炭素や水素などの気体を循環させるための換気機能。

 

蟻塚の中では、シロアリによる食事や、共生している菌によるセルロースの分解が進んでいます。

 

そのため、常に二酸化炭素や水素が発生しており、空気の循環がうまくいかなければ健康に支障をきたすのです。

それらを同時に解決するのが、蟻塚一つを大きな肺に見立てたような呼吸システム。

 

日中は強い日差しを受け、外と接している部分は蟻塚内の空気も温められます。

暖められた空気と蟻塚の奥深くの空気には温度差があるため、蟻塚内全体の空気循環が始まります。

その結果、蟻塚の奥深くは空気が温まっていきます。

 

一方で、夜間になると、外界と接している部分は一気に冷えます。

すると、日中とは真逆の空気循環が始まり、蟻塚の奥深くに残っていた暖かい空気が冷やされ、蟻塚内でまたもや空気の循環が始まります。

これらに加え、蟻塚に小さな穴が無数に空いており、そこから二酸化炭素などの蟻塚内で発生した物質も排出されていきます。

 

つまり、蟻塚は、空気が一方通行に流れる構造ではなく、時間帯によって空気の流れも変わる、という構造を持っていることになるます。

一方通行に空気が流れた場合、どうしても温度・湿度差は発生します。

 

しかし、時間帯によって循環の仕方が変わることにより、いくら構造が大きくなったとしても全体の温度や湿度を一定に保つことができる、ということを意味します。

 

研究者たちは、シロアリの構造を真似した(バイオミミクリー)建築を行なった結果、新たな疑問が発生し、蟻塚を再研究しました。

その結果、従来では一方通行の循環機能だと思われていた蟻塚が、実は空気が行ったり来たりする、肺のようなシステムになっていることを突き止めたということです。

ジンバブエのイーストゲートセンターも確かに効率的な冷房・換気を達成しました。

しかし、蟻塚に込められた知恵はそれ以上であり、それらをさらに考慮してドバイのO-14 ドバイ・タワーのような形の建築物が建てられたと言えるでしょう。

 

シロアリ研究家の現在の関心は、彼らシロアリが、どうやって真っさらな草原にあんなに大きな建造物を作るのか?ということです。

シロアリの生態には、鬼軍曹もいなければ、建築の指示者もいないはず。

彼らは、どうやって何千何万もの仲間の意識を統一して、巨大な建造物を作っているのか?

数年後にはその謎も解明され、また建築現場に応用されているかもしれませんね。

 

 

There is a new theory to explain why termites build such tall mounds – and it suggests architects could take inspiration from the tiny insects

シロアリの生態

アリ塚と空調、自然に学ぶエネルギー

ドバイプロジェクト – 0-14タワー

 


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