【電動航空機】エアバス、シーメンス、ロールスロイスの新たな戦略
電気で飛ぶ飛行機 電動航空機のアイデア
電動航空機というものは聞いたことがありますか?
平たく言ってしまうと、動力源を電気モーターにした飛行機などの空を飛ぶものを呼びます。
例えば、飛行機のエンジンと燃料タンクを、電気モーターとバッテリーに取り替えればそれも電動航空機と呼べますし、
他にも、太陽光発電パネルを設置してゆったりと空を飛び続けるような電動航空機も存在します。
太陽電池と太陽光発電を使ったものはソーラープレーンと呼ばれ、理論的には無着陸で半永久的に飛び続けることも可能だと言われています。
先日、フランスに本社を置く航空機メーカーエアバスは、大手電気等の複合メーカーであるドイツのシーメンスと大手エンジン製造会社であるイギリスのロールス・ロイスと三社間パートナーシップを締結し、ハイブリッドの電動航空機(電気飛行機)を共同開発すると発表しました。
初飛行の予定は2020年の予定とのことです。

なぜ今なのか?
欧州委員会の航空業部門は、フライトパス2050というゴールを掲げており、2050年までの75%の二酸化炭素(CO2)削減、90%の窒素酸化物(NOx)の削減、そして65%の騒音削減を目標の一部として盛り込んでいます。
大量の化石燃料を燃焼・消費し、大きな音をたててジェットエンジンで飛び回る航空業界。
上に掲げたような、高い目標を達成するには、従来のジェットエンジンを使用していては不可能でしょう。
そのため、特にヨーロッパの航空産業は、いつ本格的に電動航空機に乗り出すか、タイミングを伺っていたはずです。
欧米では、格安航空が大量の二酸化炭素を排出することなどにより、環境に悪影響を与えていると広く認知されています。
環境へのプラスの側面が多い電動航空機への参入は会社のイメージ向上に大きな役割を果たすでしょう。
エアバスら3社以外にも、2017年9月にはイギリスの格安航空 イージージェット社が電動航空機を将来的に導入することを発表しており、10月には、航空機メーカーのボーイング社、アメリカ系格安航空のジェットブルー社に出資を受けたシアトルのスタートアップ Zunum 社が電動航空機を発表しています。
(Zunum社は2022年の運用開始を目標にしており、エアバスら3社の目標よりも2年遅れています。)
最近では、世界で広がる再生可能エネルギーの流れなどもありバッテリーの価格が下がってきています。
そういった世界情勢と、競合他社の状況を伺った上で、巨大企業たちの連合を発表した、というのが今回の流れということかもしれません。
電動航空機(電気飛行機)の懸念点
電動航空機が、電気モーターで動くとしても、良い点ばかりではないでしょう。
将来、1ユーザーになるかもしれない身として気になるのは、例えば
バッテリー切れにならないか
出力は十分なのか
音はどうなのか
などでしょうか。
バッテリー切れにならないか
やはり、バッテリー式、と聞くと飛んでいる途中でバッテリー切れにならないの?という点は気になります。
しかし、そもそも燃料式であろうと燃料切れは起こりうるもの。
そして、電動航空機であれば、電気自動車やハイブリッド自動車のように、「回生ブレーキ」という機構が組み込まれるとのこと。
回生ブレーキとは、ブレーキをかける時に発生するエネルギーを電力に変換し、バッテリーを再充電する技術のこと。
ということであれば、何か緊急事態に陥ってブレーキをかけようとすると、逆に電力は増えていくはず。
動力切れを起こす可能性は低そうです。
出力は十分なのか
電動航空機になると、もちろん、ジェット噴射などによる推進力は得られません。
すると基本的にプロペラ駆動なることが予測されます。
となると、飛行機としての出力はどうなるんでしょうか?
エコだけどジェットエンジンよりも+何時間もかかります!と言われると、客足は遠のいてしまうかもしれません。
しかし、こちらについても心配はなさそう。
エアバスら3社が予定している電動航空機は、まずはハイブリッドタイプのようです。
つまり、飛行機自体に複数ついているエンジンの内、いくつかをプロペラ式の電気モーターにし、残りを引き続きジェットエンジンのまま使用しようということ。
それであれば、ジェットエンジンのパワーも利用可能になるため、出力もカバーできそうです。
音はどうなのか
こちらについては、まだ誰もサービスが始まっていない以上予測にしかなりません。
ジャンボジェットなどに乗ると、常にゴーッという音が響いており、安眠できないという人も少なからずいるでしょう。
また、飛行場の近くに住む人は、発着陸の音によって騒音被害を受ける、という話も聞きます。
ただ、もし電動航空機が実働し始めた場合、おそらく騒音に関してはかなり削減されるのではないかと思います。
ジェットエンジンを爆発させる音と、プロペラの回転する音、どちらが大音量か、というと恐らくはジェットエンジンでしょう。
電動航空機の導入により、飛行場近くの騒音被害も軽減されたら非常に喜ばしいでしょう。
各社の役割
これだけの巨大企業の3社協力、とても大きなプロジェクトになるかと目されますが、気になるのは各社の役割分担。

それは、大まかには下記の通りに進められるようです。
– エアバス
担当:全体的な統合、ハイブリッド電気推進システムとバッテリーの制御アーキテクチャと、飛行制御との統合
– ロールスロイス
担当:ターボシャフトエンジン、2メガワットの発電機、パワーエレクトロニクス
– シーメンス
担当:2メガワットの電動モーター、そのパワーエレクトロニクスコントロールユニット、インバータ、DC / DCコンバータ、配電システム

ハイブリッドの形でまず作る、という方針により、2020年という近い将来での実現を目標に設定したエアバスら3社。
この目標期限に沿って話が進行した場合、例えば2030年頃には電動航空機が当たり前になっているかもしれません。
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