世界最大級の資源会社 石炭からの撤退を発表

リオ・ティントグループ 石炭から撤退
世界で2番目に大きな鉱山業を営む会社であるリオ・ティントグループは、石炭から手を引き、より良い資源・資産への投資に注力すると発表しました。
リオ・ティントは、1873年に当時赤字だったスペイン国営リオ・ティント鉱山を、ロンドンのN. M. ロスチャイルド・アンド・サンズとパリのロチルド・フレールなどの投資家・投資銀行が買収したことで設立された、資源・鉱山業社です。
現在もロンドンに本社を置いていますが、いわゆる多国籍企業であり、その業務は世界中に渡っています。
近年の石炭の動向
2016年まで石炭の価格は長く低迷し続けていました。
2010年の12月に1000トンあたり134.75ドルという価格をつけたのをピークに、2016年の2月には46.57ドルまで下落しています。
世界的に見たら、石炭を世界で一番使用しているのは中国です。
そのため、中国経済の台頭などにより、世界で石炭の価格は上がり続けていました。
しかし、世界的なトレンドは石炭からの脱却です。
というのも、石炭は価格が安い代わりに環境に悪い。
事業者から見たら、安い方が助かるし、石炭じゃないと出せないような高火力も存在します。
しかし、国から見たら、いくら価格が安くても、空気が汚れたりすると、その汚れた空気が原因で病人が増えたり、赤ちゃんの生存率も下がったりします。
そのため、目の前の価格の安さよりも、環境にも配慮したエネルギーにシフトしていってほしい、というのが本音でしょう。
最大の石炭消費国である中国も、習近平政権の力が強くなるのにしたがって、持続的な成長のために環境への配慮を強化するという方針に舵を取っています。
リオ・ティント社のライバル・関係者達はどう動いているか?
リオ・ティント社が石炭から手を引き、既に持っていた権益を徐々に売り払っている中、ライバル企業達はどうしているのでしょうか。
基本的に、グレンコアやBHPビリトンなど、石炭を多く扱うグローバル企業は、まだまだ石炭を取り扱い続けるようです。
世界では石炭の使用を避けようとする流れはあるものの、現実問題としてはまだまだ使わないわけには行かないところが多いです。
そのため最近の石炭価格は、2016年2月の最低価格から比べると、2倍以上に戻ってきており、利益が出るようになっています。
さらにアメリカでは、トランプ政権になってからというもの、国内の石炭産業が復活の兆しを見せており、地方での仕事創出につながっているという話もあがっています。
一方で、資源開発をするときの大事な関係者として、投資家が挙げられます。
資源開発は何十年もかけて投資した金額を回収するということが多く、その前提として、資源開発が続けられることが重要になります。
投資家達からしたら、莫大なお金をつぎ込んで手に入れた石炭の権益が、掘り出せなくなってしまうことが一番恐ろしいのです。
石炭に限らず、そういった、大きな投資を行ったにも関わらず、市場や社会情勢などの外部要因が影響して、予定していたとおりの価値・リターンが得られなくなってしまったものを座礁資産と呼びます。
そのため投資家の中には、石炭などの資源からは手を引こうという声が上がってきています。
例えば、政府が出資する投資ファンドである、ソブリン・ウエルス・ファンド(英: Sovereign Wealth Fund、略:SWF)。
ノルウェーのソブリン・ウエルス・ファンドは、売上の30%以上が石炭から発生している企業には投資を行わないことを発表しており、イギリス教会の運営する投資ファンドも売上の10%を基準として、同様の方針を発表しています。
しかし事実として、石炭が生み出している電力は世界の40%近く。
天然ガスや再生可能エネルギーがいくら注目を集めていても、まだまだ世界で一番使われている電力源は石炭です。
引用 J POEWR : 世界中の電気の4割を担う石炭火力発電
先日までドイツのボンで開かれていたCOP23の場でも、2014年以降横ばいとなっていた世界の二酸化炭素(CO2)排出量が、2017年には2%上昇する見通しという研究結果が発表されました。
専門家や国際団体の間では、二酸化炭素の排出量はすでにピークを迎えており、各国の活動により減少に向かうことが期待されていたとも言われています。
二酸化炭素の排出や、空気汚染の発生から、環境にはよくないと言われる石炭。
しかし石炭からの脱却は簡単ではありません。
石炭を供給する側からも石炭から手を引く会社が出た、というのは大きな変曲点なのかもしれません。
代替燃料への移行が今後も進むことが望まれます。
One of the World’s Biggest Miners Is About to Go Coal-Free
トコトンやさしい石炭の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)