サステナブルなテクノロジー会社とそうじゃない会社

イノベーションを起こすITカンパニー、テクノロジーカンパニー
ITカンパニー、テクノロジーカンパニーの多くは、実はサステナビリティに強い関心を持っています。
例えば、マイクロソフトはバイオガスを使用した再生エネルギーのみで運用され、外部からの電気の供給を完全に絶ったデータセンターの試験運用を開始しています。
Googleの兄弟会社には、再生可能エネルギーなどの研究・開発・事業化を行う会社「X」があります。
世界で一番サステナビリティに力を入れている会社の一つはiPhoneで知られるアップルであり、彼らは自社製品のパッケージに使われる紙の供給を全て賄えるだけの森を取得しています。
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最近でも、20以上のITカンパニーが、使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うということを発表しており、その電力需要は7ギガワットにも昇ると言われています。
我々が日常的に使っているIT技術のインフラ設備や、ハイテクの塊とも言えるスマホなどの機器。
それらを製造するにも、複雑なサプライチェーンや膨大な電力消費が必要になります。
例えばスマホに使用される半導体なんかは、大きな鉱山を切り出すことで掘り出された銅が、高熱で処理されることで精錬され、専用に作られた巨大な工場で特別な製法で処理を施すことによってやっと部品が作られ、それらと綺麗な水を大量に消費して加工することでやっと製造されます。
そして、そうやって製造されたそれらの機器は、使用する際にも電力を消費しており、スマホなどのハイテク機器の普及により、電力消費が増えているのでは?結果的に環境への負荷も大きくなるのでは?という話もあります。
調査によると、それらのハイテク機器は、使用している段階で発生する環境への負荷よりも、製造段階の環境への負荷の方が圧倒的に大きいということがわかりました。
環境への負荷を二酸化炭素の排出量とした場合、実際に使用する前までに発生する量が、全体の80%にも昇るとのこと。
つまり、もしハイテク機器の発展による環境負荷を抑えようと思った場合、製造過程をエコフレンドリーにする必要があることを意味します。
例えば、2007年に発売され、こないだ10周年を迎えたiPhone。
これまでに製造のために使用された電力は総計で908テラワット、これは日本の年間電力消費量にも匹敵します。
世界中で使用されるスマートフォンの数は、2020年までに今から倍になるとの予測もあります。
それらを製造するためのサプライチェーンのかなりの部分が、中国を筆頭としたアジアに関わっていることもあり、アジアでの再生可能エネルギーへの対応は今まで以上に緊急の問題になりうるのです。
IT企業、ハイテク企業のサステナビリティにおいてリーダーシップを取りつつあるアップルやGoogle、マイクロソフトはいずれも欧米発の企業です。
では、アジアを代表するハイテク企業達はどうでしょうか?
サムスンのエネルギープラン
アジアの製造業、ハイテク産業は、欧米資本の企業にくらべるとあまり環境へのインパクトに関心をよせていないかもしれません。
たとえば、スマートフォンの製造でアジアナンバーワンを誇るサムスン。
サムスンの2017年のレポートによると、2016年度では1時間あたり16,000ギガワットの電力を消費し、その内再生可能エネルギーで産生されたエネルギーの量は僅かに1%程度だったとのこと。
サムスンは相対的な温室効果ガスの排出削減目標(intensity-based GHG target)は設定しており、単位売上高に対する温室効果ガスの排出量を削減しようとはしています。
しかし、それは温室効果ガスの絶対量の削減に繋がるかどうかは不明瞭であり、地球温暖化を止めようと思った場合には、不十分な対策です。
サムスンの売上高は近年毎年上昇しており、それに伴う温室効果ガスの排出を完全に抑制するのは非常に難しいです。
つまり、サムスンの目標は、製品一個を作る際の温室効果ガスの排出量を減らすことは考えてはいるけど、作る量全体は増え続けているから、温室効果ガス全体としては減らせないといっている事になります。
アジア最大級の製造業のひとつであるサムスングループの温室効果ガス全体排出量は、もちろん莫大な量であり、サムスンにかかわるサプライチェーン全体を変えようと思ったら、サムスンがリーダーシップをとることが一番です。
一般的には製造業に使用する電気は、電圧や供給量が安定していることが必要になります。
しかし、太陽光や風力に代表される再生可能エネルギーは、基本的にいつどれだけ発電できるかがはっきりしません。
これは製造業にとっては大きなマイナスです。
簡単ではないにしろ、再生可能エネルギーの導入や、サステナビリティレポート・統合報告書などの作成・充実化など、出来ることは数多くあります。
サステナビリティの道を達成するために近道がない以上、意志を持って今期よく付き合うしかありません。
アジアの企業がサステナビリティでリードを取れる日は来るでしょうか。
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