海に流れ込むプラスチックを減らすためにやるべきこと
限られた場所から流れ着くプラスチック
海には、人間活動から流れ着いたゴミがたくさん漂流したり、沈んだりしています。
そのゴミも多様ですが、中でもプラスチックはその量と悪い影響の大きさから、常に対応が求められます。
そんな中、海に流れ着いたプラスチックが、どこから来たものなのかを研究した論文が発表されています。
その結果、流入量のトップ10の川で、川から海に流れ着いたプラスチック全体の95%がカバーされるということがわかりました。
1. プラスチックが海に及ぼす影響
海に流れ着いているプラスチックの量は、現在年間800万トン程度。
彼らの大半は、何十年もの間分解されず海を漂い続けます。
見た目上は小さく砕けたとしても、化学合成物質であるプラスチックを、海の生き物たちは分解することは出来ません。
プラスチックが海に存在することによって、海の生き物たちは多大なる迷惑を被ることになります。
例えば、ビニール袋は亀からすると餌であるクラゲのように見えてしまいます。
誤ってビニール袋を食べてしまった亀は、消化もされず排出もされないビニール袋でお腹がいっぱいになって、栄養失調で死んでしまったりします。
また、海鳥なんかが尖ったプラスチックの破片を飲み込んだら、内臓に穴を開けてしまうこともあります。
海鳥の90%はプラスチックゴミを誤飲しているという調査結果もあり、言うまでもなく、プラスチックゴミは海の生態系を乱しているのです。
2. 海にプラスチックを供給している川
研究によると、川を経由して海に流れ着くプラスチックの量は、400万トンと全体の半分程度であり、その95%は10の川のいずれかから流れ着いているということです。
その10の川は以下の通り。
左から、川の名前、流れ込んでいる海、所属大陸の順です。
- 長江 黄海及び東シナ海 アジア
- インダス川 アラビア海 アジア
- 黄河 黄海及び東シナ海 アジア
- 海河 黄海及び東シナ海 アジア
- ナイル川 地中海 アフリカ
- メグナ川/ブラマプトラ川/ガンジス川 ベンガル湾 アジア
- 珠江 南シナ海 アジア
- アムール川 オホーツク海 アジア
- ニジェール川 ギニア湾 アフリカ
- メコン川 南シナ海 アジア
いずれも、聞いたことがある名前が続きます。
これらのうち、ナイル川とニジェール川を除いた8つの川はアジアにあり、プラスチックによる汚染との関連性もあるのでは、と指摘されています。
2015年の研究によると、プラスチックによる汚染が深刻な国のトップ20のうち、11はアジアに所属し、ナンバー1は中国でした。
どんなプラスチックが含まれているかは川によって異なり、例えば中国の長江であれば細かいプラスチックの割合が高く、ロサンゼルスのガブリエル川であれば大型のプラスチックが多いという結果が出ています。
しかし、歯磨き粉に含まれるマイクロプラスチックや、合成樹脂などについては、どこから来ているのかがまだあまり明確ではないようです。
この点については、引き続き研究が必要になります。
3. 研究の成果
今回の研究の結果、10の川が海へのプラスチックの流入の95%を占めていることが判明しました。
これはつまり、この10の川に対して対策を取るだけで、海に流れ込むプラスチックの量は劇的に減らせることを意味します。
例えば、これらの10の川から流入するプラスチックを50%減らすことができれば、川を経由して海に流れ込む全プラスチックの内の45%が削減出来るのです。
これらの研究結果を活かし、一刻も早く環境への対策をうってもらえることが望まれますね。
10 rivers may deliver bulk of ocean plastic
ナショナル ジオグラフィック日本版 2017年11月号 特製付録付き
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